情熱の扱い方〜前編〜

□カマトトは神経質
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馬車道のイル・チェントレに来た。
ひさびさ。
最後に来たのが3月入る直前だから、2ヶ月ぶりくらい。
ちょっと、というか、だいぶ眠いけど。

《チリリリリン。》

「こんばんは。」
「あ〜、久しぶり。」

マスターがいる。

イル・チェントレはちょい混み。
木曜日だもの。
妥当よね。

「京都行ってたんだよね?土産話は?」
「・・・・・・ないですよ〜。」
「何?その間は。」

マスター、その話はナシだよ。

もう!

思い出したくもない。
後輩君が私に破廉恥なことを!
最後の最後でやばいことをしたのよ。
部長が良かれと思って、番犬代わりに最後まで同行するよう寄越してくれたんだけど、ヤツは・・・・・・!
ヤツはまったく!

ああ、いやだ。
早く切り替えないと。

「フミちゃん、来てるよ。」

マスターが奥を指さす。
そこは私や私の友達が好んで使っているテーブル。
澤村君と飲んだときもここ。

・・・・・・おお、いたいた。
同い年なのに、見た目はイモちゃんやシュウ君と同級生って言ってもおかしくない、小学校の頃からの親友。
私立だったから、小学校で一緒になったら余程のことがない限りは高校まで一緒。
フミちゃんも例に漏れず、一緒だった。
ちなみに小学校から女子校。

「あ、ノイちゃん。」

間近に来ているのに手を振ってくる。
ゆるキャラの彼女はふんわりポニーテールがキュート。

「フミちゃん、お待たせ〜。」
「久しぶり〜。」
「そうだね。」
「ねぇねぇ、澤村君ともっと近づけそう?」
「いきなり何!?」

私が注文もしないうちにフミちゃんは本題に入ってしまう。
そして注文もしないうちにマスターが1杯持ってきてくれた。

「はい、辛口スプマンテ。」
「あ、ありがとうございます。」

とりあえず乾杯して一口。

「もう、びっくりしたよぉ。随分前に聞いた名前が急に出てくるんだもん。」

フミちゃんとは、会えなくても時々メールのやりとりをしていて、お互いの情報はほぼ筒抜け。
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