情熱の扱い方〜前編〜

□IDレンアイ注意報
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やたら揺れるし、カーブで落ちそうになるし、もう、ヤダ。
これで平均時速50キロ程度っていう計算結果になるなんて、おかしいでしょ。
計算ミスかな、それとも、目算した距離が結構違うのかな。
体感速度はどうやって計算するんだ?

もう。
もう、そんなことどうでもいい。

コワスギル。

「絶叫したらスッキリするよ!」

む、無理、無理。

・・・・・・放心。

ちーーん。

・・・・・・。


「メイコサン、頭、スッキリした?」

シュウ君は夜目にも晴れ晴れとしているのが分かる。
君はあの殺人的マシン、大丈夫な子だったのだね。

「私は頭スッキリどころか、魂が抜けそうだよ。」
「意外だな。こういうの大好きかと思った。」
「大嫌いだよ。」

何が君の狙いなんだ。

「ねぇ、キリちゃんって、」

まだ、頭にくすぶっているものがある。

「もしかして、澤村君のこと、学生時代から好きだったかな。」
「うん。間違いないね。大学の頃もむき出しだった。」
「・・・・・・そ、そっか。」

乗り物から降りて、出口に向かって歩く。
高校生のシュウ君が分かっていたというのに、私は何を見ていたんだろう。
節穴っだな、まったく。

「はい、次!」

シュウ君はいきなり私のカーディガンの袖を引っ張った。
出口を出ると、次って言うのに、なぜか入り口前に。

「何?」
「まだ頭空っぽになってないじゃん。」
「スッキリって、頭をパーにすることじゃないよ?」
「ダメ。もう一周。」

・・・・・・はい?

ヤメテ。


乗っている間はひたすら祓え言葉を唱えて終了。

でも、どうしても、やっぱり頭から離れていかない。

「澤村君は今まで何してたんだろう。」
「・・・・・・今、なんと言いましたかね?」
「え?『澤村君は今まで何してたんだろう』って。」
「本人に聞けば?」
「え、でも・・・・・・」
「それ考えて、何か意味あるの?」
「知識が少なすぎるもの。」
「修行が足りない。」
「え〜、何?」


もう1回シュウ君は私の袖をひっぱり・・・・・・4回連続。
さすがに最後は慣れてきた。

「シュウ君、もういいよ。」
「で?頭の中はどうなった?」
「悟りの境地・・・・・・」
「ははは。俺もスッキリした。」

楽しそうだねぇ、シュウ君よ。
ベンチに腰掛けて、ニコニコしている。
とりあえず、私も隣に座る。
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