情熱の扱い方〜前編〜
□忙しい職場と楽しい我が家
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カチャカチャカチャカチャ・・・・・・
このタイピング音をひたすら鳴らしまくる朝。
せっかくキーボードを打つなら鍵盤楽器のほうが良かったのに。
「何これ。誰よ、こんなアホな質問してくるやつ〜。ばっかじゃないの?」
ノートPCに話しかける。
職場に着いてから、すぐにメールチェックをするけど、喧嘩を売ってるのかって聞きたくなるようなものが必ず1通はある。
とりあえず買う。
イントラでお知らせしたでしょうが。
前のメールを読めよ。
心の中で悪態をつく。
人事部に来る質問なんて、半分くらいは何か探して読めば事足りることだらけ。
管理部門からのメールなんて読まなくたってフォローしてもらえるんだ〜、とか思い込んでいる社員、多そうだな。
こっちだって忙しいんだから、Q&Aくらい読めって。
私の中の怨念が暴れ出す。
・・・・・・怨念がおんねん?
とか、寒いギャグを思いついて、思わず苦笑。
「宮井(ミヤノイ)さん、何笑ってるんですか。」
目の前に座っている後輩君がデスクトップ越しに気味悪がる。
「いいでしょ。自分の仕事しなさいよ。」
後輩君は新卒採用対応のために他部門から3月末まで借りている、期間限定の要員。
名前は・・・・・・何て言ったか。
忘れたな。
借り物だしな、まあいっか。
とりあえず、後輩君。
とにかく、こいつは来週から新卒採用関西エリアの説明会にくまなく参加する。
私もそのチームに入れられそうになったけど、4月から子会社の人間が数十人出向して来るということで、その対応のために、なんとか放免された。
しめしめ。
「ミヤノイちゃ〜ん。ミーティングやるわよ〜。」
部長が私のことを呼んでいる。
女らしいが、女性ではない。
イケメン中年なのに、いろんな意味でユニセックスな人だったりする。
「はい。すみません、今行きます。」
マズい。
すっかり忘れていた。
何だったっけ?
メールに返信をする前に席を立つことになった。
スケジュールにはミーティングの予定なんて書いていない。
どうにかなるかな。
まだ2月末振込予定で起票させるものが山ほどあるのに。
委託料の類とか、請求書すら届いてないけど承認まで間に合うかな。
いや、請求書の処理はあとあと!
ミーティングだった。
あわててノートPCのLANケーブルとACアダプターを抜いて会議室に向かう。
毎日こんなだから、なんか気ぜわしい。