長編小説
□迷哭恋鎖(本編)
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Episode.0
少年は暗闇の中を走っていました。
「どうしてあの子は見つからないのだろう」
少年は気づいていませんでした。
自分が走っているはずの闇を、少年自身の身体は拒んでいる事に。
少年は闇というものを知らなかったのです。
少女は暗闇で泣きながら歩いていました。
「どうして誰も私を見つけてくれないの」
少女は気づきたくありませんでした。
今自らが歩んでいる道こそが、誰もいない、闇の深淵だということに。
少女は光を理解できていませんでした。
ふと、光の中で違う少女が呟きました。
「ねぇ2人とも、そんな道を歩んでいたら、お互いずっと会えないままですよ?」
彼女だけは、気づいていたのです。
今、少年達の歩んでいる道は、
互いに正反対の方向を向いていたのです。
迷哭恋鎖
(あなた達は、確かに恋人だったんです)