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□心結び編
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「心結び編」

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 ――舞台は、少年少女達が昭和58年6月を乗り越えた、雛見沢。

 惨劇の運命を打ち破り、悟史も無事に目覚め、帰って来た。
 これ以上ない、最高の世界――。


 梨花の経験からしとも、“ソレ”が起こる事なんて極めて稀で、ましてや“彼”がやって来る事は今回がはじめてだった。



「沢田綱吉、です。よろしくお願いします」


 ――雛見沢分校への、古手羽入以来の転校生。綱吉が訪れた事。

 外見上は明るめに振る舞っているが、梨花は――否、部活メンバーの各々が、気がついた。

 綱吉の僅かにぽっかりした空虚を残す瞳に。

――――――――――

「……俺は、やり直すんだ」

 綱吉は誰にも聞こえないくらい、小さな声で呟く。

 脳裏に宿るは、史上最悪とも呼べた、並盛での悪夢。
 傲慢なる少女によって呆気なく壊された、人間関係。



 転校前、綱吉は自分でもびっくりする程に、追い詰められていた。

 少女に騙された者達に囃されての、自殺未遂。


 しかし、直前に気づいた、綱吉の両親である家光と奈々。彼らはボンゴレと縁を切る事を綱吉にすすめ――小さな家庭教師にもバレないよう、こっそり並盛から抜け出したのだ。


 そして、彼らが新しい生活の地に選んだのが、ここ、雛見沢。
 思い切り田舎で、都会とは比べものにならない程に不便な場所ではあるが、だからこそリセットに最適だと踏んだ。

 並盛では得られなかった、新たなものもありそうだったから。



「今度は、簡単には壊れない強固な楽しい日々を、手に入れるんだ」

 放課後、綱吉は笑い声の聞こえる分校の、とある教室に入っていった――。
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