イナゴ短編ろぐ。2

□葛藤。
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「…霧野、やっぱりダメだ」


これ以上は、もう。


「どうして…神童?」


霧野の大きな瞳が、俺を射抜く。


いつもと違う、掠れた声色。囁くような甘い声。


潤んだ瞳。

紅潮した頬。


長い睫毛を震わせながら、瞬きする君。

唇から洩れる息の音に、胸がざわつく。



霧野の頬に指を伸ばす。

柔らかかった。




ああ、霧野、

好きだよ、


本当に、本当に、


おかしくなるくらい好きだ。



「…俺は、俺を制御できなくなる」


「いいよ」


「ダメだ…」





本当は、




このまま、恋に身を委ねて、君に溺れてしまいたい。

壊してしまいたい。


優しくなんか、できそうにない。




本当に、いけるとこまで、いってしまいたい。



「霧野…」



絶対に戻れなくなる。

この境界線を越えたら、もう俺は、


本当に


君を、傷付ける。




「霧野、大好きだ…」




全てを抑え込むように、霧野の体を抱き締めた。


華奢な体。



本当に、簡単に


奪ってしまえそう。






ああ、もう


好きだ。

優しくなんかできない。







できないよ。



蘭丸。

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