イナゴ短編ろぐ。2

□死を永久へ。
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1つめ。








 死って、極上の言い訳ですよね。



美化したり、崇高なものに飾り立てるのは

容易ですし。






…………………………






くすくす。


「…で、お前はどうしたいわけ?」



失笑して。


嘲笑した。


ベッドに隣通しに、腰掛ける。



霧野先輩は心底馬鹿にしたような、

蔑視をこちらに向ける。


「なにおまえ、死に対して、肯定的なの?否定的なの?」


どっちかわかんねぇよ。



普段より、粗雑な口調。


髪を弄びながら、

霧野先輩は猫のような蠱惑的な瞳で、俺を除き込む。

「だから、肯定とか否定そういう問題じゃないんですよ」


「意味わかんない。言い方が遠回しすぎ。」



簡潔に、一言で。


霧野先輩の手が、此方に伸びた。



そして、喉仏に触れた。


軽く押される。



ほんすこし、息苦しい。















(一緒に死のうか。)


(それが聞きたかった。)


…………………………


死は永遠を模すのに、


一番手っ取り早い。





君と共に、


偽物の永遠へ。











・・・・・・・・・・・・・・・・・


2つめ。









(あぁ、殺してやりたい。)

(まず、)


(髪を散切りにして、)


(…それから、)




「ヤれるもんなら、どうぞ?」


くすくす。

霧野先輩が笑みに顔を歪ませた。



はだけた衣類をそのままに、ベットから上半身を起こす。

普段は見せない、狂気を孕んだ瞳。


蠱惑的な翡翠の光に、射抜かれる。



白い肌にこびりついた赤い痕に、血が滲んでいた。





「あれぇ、聞こえてましたか?俺の心の声。」


「見てりゃわかるよ。」


だって、俺も同じこと考えてたし。


くすくす。

そう言って、霧野先輩は笑った。


乱れた髪。

潤んだ瞳。

事後の、霧野先輩。


掻き立てられるのは嗜虐的思考。




(細い首、)


(簡単に、折れてしまいそう。)




「…ねぇ狩屋。」

「なんですか?」

「殺したいなんて狂ってるよね?」



くすくす。くすくす。


可憐な顔立ちが、邪悪に歪んで。


だけど、それでも、綺麗な先輩。


「でもね、今狩屋を殺してしまえば、」




正に永遠。

永久の愛。



あの人たちのような
偽者の紛い物じゃない。




そして、


愛すべき人が
死ぬのなら、





自分の手で、最後の時を。



「じゃあさ、霧野先輩」


「なに…?」


「お互いの首、お互いで締めてみます?」



運が良ければ、



「そうすれば、お互い夢が叶いますよ」




霧野先輩は、


くすくす。


そう笑って、




「俺も同じこと考えてた。」









(ああ、殺してしまおう。)

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