イナゴ短編ろぐ。2

□今日で最後。
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分かってたことだろう。


いつか、終わる恋だって。






















「…髪さ、切ってくれよ。神童」


大きな裁ち鋏を、神童へ差し出す。


神童は、一瞬、困惑に眼を見開いたが、直ぐに慈悲に満ちた、妙に優しい微笑みを浮かべた。


「…ああ、分かった」



神童が鋏に指を絡める。

軽く、指と指が触れた。


神童の指は、長く、綺麗だ。

ピアノの上を優雅に滑る指。迸る甘美な旋律に、胸が蕩けるあの感覚。

触れていた刹那の間に、感情が沸き上がってきて涙腺が緩んだ。


必死に堪えた。



「霧野の髪は、本当に綺麗だな」


シャキン


響く刃と刃の擦れる音。

鳴る度に、俺と神童の時間が終わっていく。



この髪は、君への執着の結晶。


それが、どんどん、裁ち切られていく。

君の手によって。



「霧野、どのくらい切る?」

「神童よりも短くして」


「分かった」



シャキンシャキン





ああ。


もう。




俺、女に生まれたかった。




……………………


もう、この気持ちは封印しなければいけないから




髪の毛、切ってよ


君の手で、俺の執着を
切り落として












・・・・・・・・

後ガキ的な補足


神童財閥は後とり必要だから・・・

と考えた蘭は、自ら身を引く。


拓はもしここでひきとめても

俺は邪魔ものなんだって

蘭が一生自分を責めつづけるだろうから

あえて、何も言わない。

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