イナゴ短編ろぐ。2
□恋の始まる予感てやつ。
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この胸に沸き上がる、妙な焦燥感。
これはいったい何なのだろう。
下校中。
夕闇が空間を満たし、なんとなくセンチメンタルになるような、そんな時間帯。
神童拓人は黙々と、不可解な感情について思案していた。
この感情は恐らく、今、隣を歩く幼馴染みに抱いている感情なんだと思う。
神童は考える。
だけど、どうして、今更。
今までずっと一緒にいたのに。
神童は、隣を見る。
美しい造型を保った、その横顔に暫し、見とれる。
長い睫毛は反り返って、翡翠に光る瞳をさらに誇示し、白い肌は頬がほのかに朱に染まり、愛らしかった。
本当に、男とは思えない。
「ん?なんだよ、神童」
桃色の頭髪を揺らしながら、霧野蘭丸がこちらを向いた。
大きな瞳が、神童を射抜く。
何故か高鳴る鼓動。
神童は、思わず視線を落とし、なんでもない、と呟いた。