イナゴ短編ろぐ。2

□小学生拓蘭妄想。
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最近、矢鱈と構ってくる奴がいる。


霧野蘭丸は、休み時間の喧騒を避けるように、教室から飛び出した。



印象的なのは、ミルクティに黄金の蜂蜜を混ぜたような甘い茶髪。肩にかかる程度のフワフワした髪型。

深い焦げ茶の瞳は、いつも不安げに翳っていて、なんだか、情けない印象を抱く。


たしか、名前は、神童拓人。


神童財閥とか言う大金持ちの御曹司だっけ。


性格は、そんなに明るい訳ではないけど、彼の周りにはいつも人が沢山いる。


成績優秀で、前なんか、算数のテストで満点をとってた。


整った顔立ちは、女子に人気があって、ピアノもサッカーも出来る。


いわゆる、人気者。




男女″と呼ばれ、除け者の霧野とは大違いだった。


霧野は北校舎の最上階へ向かった。そこの外れにある第2音楽室には、殆ど人気がない。



昼休みになると、霧野は毎回、ここへ逃げ込んでいた。


矢鱈と構ってくる鬱陶しい神童拓人から身を隠すため。


同情なんか、いらねーんだよ。


霧野は唇を噛み締めた。



人気者の彼の側にいると、男女″である自分の惨めさが目立って嫌だった。



音楽室には、大きな鏡がある。


音楽室の扉を開ければ、嫌でも、その鏡が目に入る。

そこに映る、自分の姿も一緒に。





桃色の髪。

青空に翡翠の光を混ぜたような大きな瞳。


睫毛は長く反り返り、その目を引く大きな瞳を、際立たせる。


白い光の粒子を振り撒く柔肌は頬だけが淡い桃色に染まって、辛うじて、人間らしさを表現していた。


本当に、女みたい。



霧野蘭丸は、自分の外見が大嫌いだった。









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この後、ピアノ弾きに来た神童くんが現れて仲良くなるという妄想。

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