混沌の旅人
□断末魔の果ては紅
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ツン、
鼻を刺す異臭に、脳が覚醒した。
「…う…ぅ…」
濡れた感覚。
液体の中に沈んだ手を動かして、地面に置く。
ぐずり、と、また只の地面ではなさそうな感触が、手にリアルに伝わった。
…なに、これ…?
目を完全に開いたはずなのに、真っ暗。
光が一筋も見えない…。
どこ…?
手に力を入れて地面を押して、上体を起こした。
ばしゃ、と、液体から体を出す──と言っても、腰の辺りまで、その液体は満たされている。
この、鉄分の臭い…
まさか、
「血…?」
ということは、…私は、血の海にいる?
今度は立ち上がる…でも、状況はあまり変わらない。
暗闇は暗闇だし、
血の海は血の海、
私は──?
不安になって、動かせる部分は全て動かしてみた。
指、手、腕、肩、足──眉間に皺を寄せたりもしたけど、すべて出来た。
今のところ、身体に異常はないようで。
そして、次に不安に思ったのは…
やっぱり、
「どこ…?」
場所が、分からない。
見ようにも、まずこの暗闇から何とかしないと…
…燃やせるものさえ、あれば…
でも、分からない、見えない、暗い──
「怖…い…ょ」
口に出したら、もっと怖くなった。
声が全く周りに響かずに、それどころか──闇に吸い込まれてしまって。
無限の闇──孤独。
独り…
「誰、か…」
誰か、来て。
誰か
助けて──!
誰か…
「…………ード、さん…ッ」
「レイン!!!」
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