Book2 長編

□11人
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『前来た時よりも家が多いな。』

ビルが少なくなってきている。
そして、水の量も増えてきて、雨が降っている。

『またてめぇか。・・・一人か?』
『ああ、てめぇにようだ。』

口調がわるく、どちらがどちらかわからない状態だ。

『まぁ挨拶ってとこだ。とくに用はねぇよ。』
『右腕がねぇな。切り落としてきたのか?』

話が噛み合わない。
それでもハクは答える。

『右腕は相方がもってるわ。』

これだけきけば切り落としたのかと思うだろう。
それでも、シロは理解したのは、何も言わなかった。

『・・・お別れか。ガラにもねぇな。』
『・・・あぁ。』

悲しそうに地面を見る。
地面といっても、ビルの壁だが。

『らしくねぇな。なんでそんなにへこんでるんだ?』
『凹んでるのはサタチの影響だ。
 私じゃない。』

ボリボリと頭をかく。
スカーフがゆらゆらと揺れ、ない右腕が見え隠れする。

『・・・悲しそうなエスティグマだな。』

目から涙が流れたあとかのように、顔に模様がついている。
しかも、水色なのでなおさらだ。
シロには今はエスティグマと呼べるものがない。

『おとうさんゆずりさ。』
『用事はもうおわりか?』
『ああ。』

用はそれだけだ、といって足元から消える。
最後までシロを見ていた。

『さようなら。』









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