『桜の下の姫君へ』

□師走、新たな敵の気配
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妖気を辿って来た所は、1つの小さなお寺。


桜はそこに来ていた。




桜「………」





―ガラッ


中に入ったら、禍々しい妖気の渦が渦巻いていた。


そこに1人の影が…







桜「あなたは、誰なのですか…?」




「ダレ?ワシの事を聞いておるのか?小娘」



素直に頷く。




「フフフフ……いいだろう…」



そう言って、暗闇から出てきたのは…





桜「!!……何…で…」



「私の姿を忘れてしまったの?桜」





目の前に現れたのは、死んだ筈の桜の“母”だった。



あり得ない事に、目を見開く。





―いや、そんな筈、あるわけない…



母はあの時、確かに死んだ。


自分を庇って、死んだんだー…
















桜「母様の姿になった所で、私は騙せませんよ?」




「フフフ……騙そうなど思ったのではない。

貴様の中にある“心の闇”を調べる為の心の揺らぎがあれば、十分じゃ」




桜「っ!」



急にその妖怪の姿が“夜リクオ”に変わった。



さすがの桜も、それには大きく動揺した。





その隙を見て、妖怪は桜の肩を刀で貫いた。




桜「く…ッ」



桜は後へと身を引いた。

引いたと同時に、刀は体から抜ける。

貫かれた肩から血が流れ出し、着物を赤く染める…






「フフフフフ……どうじゃ?痛いかえ?」



妖怪は愉快そうに笑う。



「弱味を握られたら、太刀打ち出来まい。

ワシの“幻術”は凄かろう?」





































桜「そう……あなたも“狐の妖怪”なのですね…」



闇の中で桜の碧翠の目が金色に光る。


そして桜の花弁が桜の体を包み、艶やかな黒髪は月夜に輝く銀髪になり、生き物のように動く尾と獣の耳が生える。



桜の花弁が周りに散らばった。



妖怪の姿になった桜が、妖怪を睨む。














「成程……貴様も“狐”か…」






桜「人の“恐怖”で得た畏なんて、妖怪の一面でしかありません」





静かな声でそう言う。




異形な金色の瞳が妖しい光を持つ。


その瞬間、妖怪の目は、幻術に捕らわれた。




「(何だ!?何故こんな小娘がワシより強い幻術を!!?)」




桜は手の平に息を吹きかけると、無数の花弁が妖怪を包むように渦巻く。





桜「私は、あなたのような妖怪を見逃す事は出来ません」






“演舞・乱れ桜”



桜の花弁は渦を巻きながら、妖怪の体に刺さる。






「ぎゃあああああああっ!!!」







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