『桜の下の姫君へ』

□Prolog
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始まりは桜の木の下。




















いつものように散歩をしていた奴良組2代目、奴良鯉伴。



だが、いつも見慣れた場所に、見慣れない物が置いてあった。






気になって近づくと、






「……こんな所に捨て子か」





赤ん坊は狂い咲きした桜の下で桃色の花弁を浴びながら、
その藍翠の瞳でただただ不思議そうに鯉伴を見上げていた。



赤ん坊の横に紙がある事に気付き、それを手に取った。





「…手紙か?」





そう思い開くと、中には女のものらしい綺麗な字で何かが書かれている。






〈この子は半妖です。
この子を拾われた方は、どうかこの子を幸せにしてあげて下さい〉






たったそれだけ。


これを他の人が読んだら悪戯かと通り過ぎるだろうが、鯉伴は違う。





「半妖ねェ……俺と同じだな」





優しい顔で微笑むと、赤ん坊を抱き上げた。


自分の腕の中にいる儚い存在。
その重みが命の重みなんだと思うと、とてもとても大切にしなければという気持ちが溢れた。






「今日からお前は、俺達の家族だ」





鯉伴の言ったことを分かっているかは分からないが、
赤ん坊は喜ぶように手足を動かす。

半妖だが、人間らしい仕草だ。





「あ、名前どうすっか…」





手紙には赤ん坊の名前については何も書いてなかった。


つまり、鯉伴自身がつけなけらばならない。






「桜の下にいたんだしな……う〜ん…」





しばらく悩むと、「お!」と何か閃いたような声を出す。





「今日からお前の名前は…“桜”だ!」





桜と呼ばれた赤ん坊は、嬉しそうに笑った。






「気に入ったか?

よし、帰ろうぜ。俺達の家にな」





























この2人が出会った瞬間から運命の歯車は、

別の方向へと回り出したのだ―――。















.→To be continued...

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