□長くて切ない片思い
2ページ/3ページ




2人の距離が後数cmというところで、桜は頭を少し後ろへと引き…






ゴツンッ!






鈍い音と共に頭にくる振動と、ズキズキする痛み。




玖音はその衝撃で桜から離れた。




桜は額を押さえる。


自分からやったが、お互いに石頭なせいか、通常の何倍もの痛みが襲ってきた。




『っい、いた〜〜〜〜』




「っ普通、頭突きするか?この状況で…」




玖音も額を押さえながら、呆れた眼差しで桜を見る。



桜は未だに赤い顔で玖音を睨んだ。






『と、とっさの判断だったんです!

く、玖音さんがいきなり、近づいてくるから…』






その反応が意外だったのか、玖音の目が点になる。




そして肩を震わす。






『な、何で笑うんですか!!?』




「い、いや…わ、悪ィ……桜の反応がっ、面白くって…つい……ははははは!」




『わ、笑わないで下さい!!』






何に笑われているのか分からない桜は、とにかく笑わないように玖音に言うが
玖音の壺にはまってしまったらしく、中々笑いが治まらない。





しばらくして、ようやく落ち着いてきた玖音。







「あー、面白ェ…」




『こっちは全然面白くありませんよ』






散々笑われて、桜はご立腹だ。




玖音は悪びれた様子もない。


そして急に桜に手を伸ばす。


急なことで驚いたが体が反応せず、玖音の大きな手が頬に触れ、桜の首に顔を埋めた。






何をする気かと思った直後…






『っ!!!!』





首筋に鋭い痛みが走った。




このまま肉を食い千切れられるのではと疑うほどの力で首筋に噛みつかれている。



余りの痛みに、桜の目には涙が溜まっていた。




玖音はニヤッと笑いながら、桜の首筋から顔を離す。





玖音の顔を見て、桜の内心にふつふつと怒りがこみ上げてくる。







『いきなり何するのですか!?か、噛みつくなんて…』




「サービスだ、ありがたく受け取っておけ」




『これのどこがサービスですか!!!』





理不尽だ。



玖音が噛みついた首筋に触れると、血は出ていないが何かの痕のようなものが残っている。





『な、何ですか…これ…』




「その歯形を見せて、奴良リクオに思いっきり怒られてくればいいさ」




『え!?何でリクオ様がこれを見て怒るのですか!!?』




「はぁ?まさか知らねーのか?俺でも知ってんのに…
とんだ箱入り娘だな」




『……?』




その様子を見て、玖音は呆れると同時に笑いがまたこみ上げてきた。






「あ、それとも俺と浮気でもするか?お相手するぜ?お姫さん」




そう言いながら桜の髪をひとふさ取ると、上目遣いで桜を窺いながら口付ける。




その行動にかぁぁぁっと顔を赤く染めた。







丁重にご遠慮させていただきます!!!






そう怒鳴って桜は玖音の元から走り去った。




残された玖音は、そんな様子にキョトンとした後…






「ふっ……あはははははははは!

本当に面白れェ!!からかいがいがあり過ぎて」






玖音はどうやら新しい遊び道具を見つけたようだ。











.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ