弐
□「誰よりもお前がー…」
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舞姫に案内してもらい、部屋でふぅっと息をつく。
そして今日の出来事を思い返す。
舞姫がリクオとキスをして、リクオと喧嘩して、舞姫に人質として取られて、玖音とリクオが殺し合って…
本当に今日はたくさんの出来事があった。
『リクオ様に謝るタイミングを逃してしまいました…』
彼の傷を治してる時、彼は1言も放さなかった。
何か気まずい空気が漂っていた気がする。
しかし、舞姫はリクオのことが好きなのかは分からないままだ。
本当に舞姫がリクオが好きなのだとしたらと考えると…
『(変な気分です…)』
胸のあたりにモヤがかかっている感じだ。
「桜、入るぞ」
『(え!!?)』
考えてたら本人がきた。
心の準備も何もなしにリクオに会うなんて。
しかも返事もなしにガラっと襖を開けてきたリクオに、更にパニックになる。
「今日は悪かった。怖い思いさせただけじゃなく……その、思ってもない事言っちまって…」
『…わ、私の方こそ…ごめん、なさい…』
片言だが、謝る。
未だに混乱した頭を整理して、次の言葉に何を言ったらいいか分からない。
悩んでいると、リクオが桜の前にしゃがみ込んだ。
「後、俺は誰よりもお前が可愛い奴だと思ってるぜ?」
突然の口説き文句に顔を真っ赤にさせた。
そして桜をぎゅうっと抱きしめる。
耳元で囁くように…
「本当に悪かった。頭に血が上って、逆ギレなんかして…他の男の所に行けなんて、これっぽっちも思ってねェから」
あの時の言葉を気にしてたのか。
だが、そんな言葉をサラっと言ってしまうリクオに耳まで赤くする。
体中に熱がこもり、恥ずかしさのあまり顔をリクオの肩に埋めた。
『そんな事言ってるからたらしって言われるんですよー!!』
「は!!?」
桜の訳も分からない叫びに困惑する。
たらしなんて言われた覚えはない。
『誰かれ構わず優しくして、色んな人に好かれて…
なのに、私なんかに真っ直ぐに気持ちぶつけてくれて…それで…』
混乱し過ぎて桜の目には涙が滲んでいた。
リクオの周りには、雪女、家長さん、淡島(?)、毛倡妓に舞姫など…
自分よりも素直で可愛い子がたくさんいる。
なのに、なぜ自分に好意を向けてくれるのか分からない。
「何で泣いてんのか分からねーけど、俺は桜のことが好きだ。
それだけは分かって欲しい」
桜を放して、頭を軽く撫でると部屋を出ていった。
撫でられた部分を触れ、桜は…
『(このままじゃいけないことは、分かってるんですよ…)』
この歪な関係を続けるわけにはいけない。
答えを出さなければ。
いつか。
例え、どんな答えを出しても、この関係は壊れてしまうのだから…
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