弐
□真実
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約100年前。
迷宮の奥深い闇の中に1人でいる妖怪がいた。
彼の純白の髪は闇の中ではひと際目立っている。だが、その純白の髪の所々には赤黒い血痕がついていた。
闇の中で生きていく妖怪。
確かに恐ろしいものだ。
人間だけでなく、妖怪を殺すことを快楽にしているのだから。
人の間では「悪夢」などと呼ばれることもある。
精神を壊して生きた屍とすることは彼にとって簡単なこと。それを恐れない人間なんてどこにいる。
いないからこそ、彼は暗い闇の中1人で生きていかなければならない。
「…誰だ?」
誰かの気配を感じて声を発した。
闇の中から現れたのは、光のような金色の髪をした女。
纏っている雰囲気から妖怪だということが分かるが、自分とは違う何かを感じた。
「私は遊戯組の姫君、舞姫でございます。
あなたは最近、ここらで妖怪を殺している……闇に棲む妖怪で宜しいのかしら」
「俺に何の用だ?殺して欲しいってんなら、殺してやってもいいぜ?」
挑発するように口の端を吊り上げる。
男からは狂気しか感じ取れず、笑っているのに目の奥が笑っていない。
背筋が凍るような冷たい目。
「生憎、私にはそんな願望ありませんわ」
「じゃあ何の用だ?」
「あなたを遊戯組に入れる為に参りました」
「は?」
にこっと笑う彼女に、彼は間の抜けた言葉を発してしまう。
それでも彼女は笑顔を絶やさない。
「遊戯組に歓迎致しますわ♡」
彼は彼女を睨む。
「ふざけんじゃねェ。そんな所に入ったところで、面白い事なんて何もねーんだろ」
「では、私があなたの駒になりましょう」
突然の申し出に、目を見開く。
そんなことを言った奴は初めてで驚いた。
「それなら、楽しいでしょう?」
「正気かい?」
「えぇ、正気ですわ」
彼女は本気だ。
何か企みでもあるのかと疑ったが、彼女の発想が面白いとも思った。
しばらく悩んだ後、ハハッと笑う。
「仕方ねーな、あんたを使ったゲームも良さそうだ」
どうやら話に乗ってくれるらしい。
そのことに彼女はニコッと笑うが、その笑みには憂いが交っていたことに、彼は気づかなかった。