□真実
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「これが玖音の本来の姿ですわ」




舞姫は静かな声で言い切った。




だが、まだ信じがたい。



さっきまで大人の姿だった玖音が、なぜ子供の姿になったのか。



そこが不思議でならなかった。





『玖音さんの本来の姿とは、どういうことなのですか…?』




そう問う。



舞姫は横たわっていた玖音を抱き上げた。






「この子は心に棲む妖怪、こっちでは不安定な存在なのです。故に、子供にも大人にもなれますの。

リクオ様に畏を断ちきられ、消耗したことにより大人の姿が維持できなくなったのでしょう」





悲しそうに目を細め、抱き上げている玖音を見る。



その瞳は慈愛に満ちていた。




大切なものを見るような目。





玖音の狂気染みた冷たい目とは対極する目だ。







「教えて貰おうじゃねぇか。お前と玖音のこと。

そして、桜を狙った理由もな」





リクオがそう声をかけると、舞姫は静かな眼差しでリクオ達を見た。






「敗者は勝者の言うことを聞くのが筋じゃねーのかい?」




「…分かりました」






舞姫は観念したように、少しだけ溜め息をつく。




桜は息を呑んだ。



自分を狙った理由もあるが、彼らの過去を知ることの緊張からかもしれない。







「私と玖音は、元は“人間”でした」





その言葉に目を見開く。



さすがに予想外だ。





『(元、人間……もしかして、舞姫たちは…)』





「そして玖音は私の実の“弟”」




『(やっぱり…!)』





舞姫の玖音を見る目がとても優しかったことに納得がいく。






弟だからこそ、心配だった。


弟だからこそ、玖音のことが大切に思っている。









「私は人間だった時に、連続殺人鬼から玖音を逃がして無残に殺されました。

そして目が覚めた時……私は妖怪になっておりました」






『………』





舞姫が妖怪になった理由。



それは現世への強い未練から。







「私は遊戯組の初代組長に拾われ、ここまで生きてきました。

そして約100年前のある日、ある噂を耳にしたのですわ」





『ある噂…?』





「弟に良く似た容姿をした妖怪が、妖怪を殺していると」





「それが、玖音…」





リクオの言葉に頷く。





「えぇ。再会した時は大人の姿だったので、多少驚きましたけど」







再会した時の弟の姿は、何百年経っても忘れることはないだろう。







闇の中で1人。


純白の髪を血で汚していた頃の弟の姿。








狂気を身に纏った、冷たい華。












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