□真実
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リクオの首に刃が当たるまで後数cm。




「止めなさい、玖音」




舞姫の声が響き、玖音の動きが止まった。


だが、リクオの首元にある刃は引かない。




そして舞姫は桜の喉元にあった小太刀を地面に落とし、桜を放す。






「私達は負けたのですわ。ここで潔く負けを認めなければ遊戯組のルールに反します」




玖音は無言で舞姫を睨む。



その瞳は怒りと狂気で冷たい。


リクオは傍にいる玖音の冷たい畏に息を呑んだ。





「ここは刀を納めなさい」




諌めるように声を尖らせる。



だが、玖音の答えは分かりきっていた。




「嫌だ」



「玖音っ!」



更に声を尖らせ、舞姫と玖音の間には険悪な雰囲気を漂わせている。



玖音は奥歯を噛みしめて、言う。




「俺はまだ戦える。ようやく面白いおもちゃを見つけたんだ。

お前に止められる筋合いなんかねェよ。

だから邪魔すんなっ!!!」




怒鳴る玖音に、舞姫はその怒気に怯む。



彼は本能に従うつもりだ。




玖音にとって遊ぶことが何よりも優先。


自分が満足するまで、遊びたいのだ。


それが命が危険であったとしても…






『………』



桜が無言で玖音に近寄る。






ぱしんっ!!






思いっきり玖音の頬に平手打ちを決めた。



玖音の視点が桜になったおかげでリクオは玖音と距離を取る。



桜は完全に怒っている。


それは玖音も同じだ。





「何しやがる……」




低く唸るように桜を睨む。




『玖音さんは、ご自分の命が大切じゃないのですか?舞姫は、玖音さんの事をすごく心配しているのですよっ!?』




「………」




『私だって、リクオ様の事が心配で……とっても心配で…』





「!桜……」




どんなに喧嘩しても、相手のことが心配だったのは同じみたいだ。



リクオはそのことが少しだけ嬉しくなる。






『だから、心配している人に向かって“邪魔するな”なんて絶対に言わないで下さい!!
もっと、ご自分の命を大切にして下さい!!!』





怖いもの知らずとはこういう時にいうのか。



玖音もその威圧に押されたのか、しばらく無言だ。






「……そんなの…お前に、関係無い…じゃんか…」





バタッと玖音は今度こそ意識を失い、倒れた。




桜は玖音が倒れてようやく我に返り、焦り始める。





『ど、どうしましょう!?怪我人を思いっきり叩いてしまいました…!!』






とにかく傷口を塞ぐために手をかざそうとするが、玖音の体を妖気の霧が包み込む。



妖気の霧が晴れた時…





『え……?』




桜とリクオは唖然としてしまう。





さっきまで青年の姿だった玖音が、霧が晴れたら“小さな子供”の姿に変わっていた。





「何がどうなってやがる…」




リクオも信じられない思いでいっぱいだ。



身に纏っている着流しは確かにさっきまで玖音が着ていた着流しだった。


着物も縮んでいるが…



この子供は玖音なのかと疑う。






「…これが玖音の本来の姿ですわ」









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