□The last game
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『っ…』




リクオと玖音が桜達の目の前で戦って少ししか経っていない。



だが、桜にはとても長い時間に感じた。




「くっ…!」



『リクオ様…!』



リクオの呻き声を聞き、桜は悲鳴に似た叫びをした。




リクオの黒い着物が所々切れ、そこから赤い液体が滲み出ている。


その液体が地面へと滴り落ちる。





『(何でこんな…)』




桜は酷い事言ったと自覚している。


リクオもあんなに桜のことを怒っていた。




なのに、何であんなに必死に自分を助けようとするのか分からない。





傷つく理由が分からない…








「(チッ、これっぽっちかよ。

あの時の力は一体どこから出てきたんだ?)」





玖音はチラッと目の端で桜の姿を捕えた。


そしてニヤッと口元を緩める。




リクオの刀を軽々と避け、桜と舞姫の元へと舞い降りる。




「どうしたんです?」



「ちょいと桜を借りるぜ」



腕を引かれ、玖音の胸に飛び込む形になってしまう。



リクオは玖音を睨んだ。

その目は「何をする気だ」と言っている。



桜自身も困惑しているみたいに玖音を見上げた。



玖音はそんな桜を見下ろし…






『……!!?





舞姫もリクオも驚いたように目を見開いた。



桜自身も信じられない気持ちでいっぱいだ。





「あら、まぁ…」



舞姫が何とも意外だと言わんばかりの声を出し、ハッと我に返る。




今…


玖音と桜の唇は重なっていた。



桜は離れようと足掻くが、玖音の手が首のあたりにあるため身動きが取れない。


首を押えられて息苦しさを感じる。




この口付けは決して好意からじゃない。




「てめぇ…っ!!!」



リクオの殺気に気づいた玖音が、閉じてた瞼をそっと開く。


唇を離すとニヤッと口の端を吊り上げた。



その表情は悪戯が成功した子供のようだ。




「お前、独占欲が強いみたいだからな……効果的だったみてーだな」




桜を後ろから包みこみ、顎のラインを掴む。


その行動はリクオに見せつけるようだった。




「っ俺を怒らせるためだけに桜を利用しやがったのか…!!?」




「あぁ、おかげでお前は怒った。その怒りのまま……さっさと来いよ」




挑発的な言葉をかけるが、リクオは玖音を睨んだまま動かない。



その理由が分かった玖音はあーと声を出した。




「俺が桜を盾に使うんじゃねぇかって恐れてんだろ?

それもいいかもしれねェな……なぁ?桜」




桜の耳元で囁く。


桜自身は命の危険を覚えた。


舞姫に拘束されている時よりも、玖音の近くにいる方が怖い。


いつ殺されるか分からない不安感がある。





「いい加減にしやがれっ!!!」




リクオが怒り心頭で一気に玖音との距離を詰める。



玖音は余裕の笑みを浮かべていたが、リクオが玖音の前にしゃがみこみ、玖音の顔面目がけて刀を振り上げた。



顔が狙いなら桜を盾に使えない。



仕方なく桜を舞姫の方に突き飛ばし、刀で受け止める。



だが、リクオは玖音の腹を蹴り、壁の方に思いっきり蹴り飛ばす。



飛ばされた玖音は迷宮の壁に背を打ち、玖音の上に壊れた瓦礫が落ちた。





『(す、凄い…)』




舞姫に再び拘束された桜は唖然とする。




さっきまで玖音に苦戦を強いられていたリクオが、玖音よりも圧倒的な力を発揮した。



それはリクオに秘められていた力かもしれない。





「うっ…」



頭を押さえて、玖音が瓦礫から出てきた。




「……血……」




彼の掌についているのは彼自身の血。


それを見て、最初こそは目を見開いていたが、次に喜びに似た笑みを浮かべる…




「ははははははははは!!!」




急に笑い出した玖音に目を見開く。





「何だ…?」




「ククッ…俺が血を流した?…こんな感覚、久しぶりだ!!」




彼の様子を見て舞姫は冷や汗を流す。




「(あらあら……玖音の鎖が千切れましたわ…)」






玖音は刀の刃先をリクオに向ける。


その瞳は狂喜で染まっていた。





「楽しもうぜェ?奴良リクオ。

お前をもっと血で染めるのが楽しみになってきたぜ」




「チッ……その白髪頭が赤髪になんなきゃいいけどな」







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