□The last game
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『……!』



桜達がいる所より少し離れた場所で凄い爆発音が聞こえた。




『リクオ様…』




心配そうな声で彼の名を呼ぶ桜。


その様子に舞姫は笑みを浮かべた。





「ふふ、そろそろ時間切れですわね」



『……』



「何か言い残す事はなくて?」




笑顔のまま訊かれ、桜は真っ直ぐな瞳で舞姫を見た。




『…リクオ様は、負けてません』



「!まだそんな事を…」




いい加減諦めたら?


舞姫はそう言ったが、桜は頑として首を縦に振らない。




『リクオ様は必ずここに来ます。私が例え「来ないで」と言っても……絶対に…』




いつだってそうだった。


桜の気持ちなどお構いなしに、彼女を迎えにくる。




今は喧嘩中でも…


きっと…




ちょっとした希望だったのだ。








『舞姫、もうこんなこと…止めませんか?』



「………」



『舞姫と争うのは……悲しくて、辛いです…』





初めて妖怪の女友達が出来た。



奴良組の妖怪達は彼女を“お姫様”としか見てくれない。


その分、気軽に話せる友達がいないのだ。





舞姫はそんな彼女に出来た初めての女友達だったからこそ、こんな風に争うのは辛かったのだ。





『舞姫も……玖音さんの事、傷つけたくはないのでしょう?』




「……!!」




図星といった所だ。





舞姫は玖音とリクオが戦っている方を心配そうに見つめていた。






『だからー…』



「っ本当にムカつきますわ…」




『え…』



檻を開け、中に入ってきた舞姫が小太刀の鞘を抜いた。



抜き身の刀を見た桜の心の底から恐怖心が生まれる。


舞姫を見上げると、無表情で心が読めない。




「死んで下さいまし、桜」




その刀が振り下ろされた。


すぐさま横へと逃げ、避けたが、舞姫は次こそはと狙ってくる。




檻の扉の方へ向かおうとした桜の足を踏みつけ、身動きを取れないようにする。






「今度は逃がしませんわよ?」





『い、いやっ!り、リクオ様…!!!』






ほぼ無意識に彼の名を呼んだ。



そんな桜を嘲笑うかのように見下ろす。





「ふふ、奴良リクオ様は今頃…」















































































「桜ー!!!」




「っ!!?」



舞姫はすぐさま声のした方を向いた。



桜もそちらを向く。





そして瞳に映る人物を見て、今の状況が変わった訳でもないのに心の奥底で止めどなく“安心感”が溢れてきた。






『きゃ…!』



急に腕を掴まれて立ち上がらせられたと思ったらそのまま檻を出て、リクオに見せつけるかのように桜の喉元に小太刀を突き付けた。



桜はその刃物の冷たさに、冷や汗を流す。





「それ以上近づいたら、桜を殺しますわよ?リクオ様」




「っ…」




リクオはその場で立ち止まった。



彼女の冷たい声に、桜も恐怖で硬直してしまった。

昨日出会ったばかりの桜にも分かるくらい、前姫の声は鋭く冷たかった…








「たくっ、行かせェっつってんだろ」





リクオと舞姫の間に立ちふさがったのは玖音だった。





「チッ、しつけェ野郎だ」


「そりゃどうも。神経は図太いんでね」




口元は狐を描いているのに、桜の瞳に映る玖音はまるで別人のようだ。




『玖音…さん…?』




玖音が桜の方を見て、ニッと笑う。


しかし桜はその笑みに氷のようなものを感じた。


獲物を見るような獣の目。

その中に無邪気で残酷な子供のようなものを感じさせられた。





「まぁ、ここでなら桜の目の前でお前の最後を見せられるしな」




「さぁ?どうだかな」




どちらとも余裕があるように思えた。



だが、緊迫した空気を漂わせていた。






「玖音、早くして下さいまし」



舞姫がせかすように玖音に言った。




「分かってるっつーの。ちゃんと桜を抑えてろよ?傷を治されたら、つまらねーからな」



「分かってますわよ」



ニコッと笑う。


玖音はリクオの方へと向いた。




「行くぜ?」



「来いよ」




それを合図に玖音とリクオの刃と刃がぶつかった。








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