□誘いの手紙
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「「「お帰りなさいませ、姫様」」」





『ただいま…です』






冬休みということで、京都の山奥にある宮羅組に帰ってきた。


里帰りというものだ。



この土地は春夏秋冬、桜が満開で桜の花弁が舞い散っている。

そして何より、結界で守られていて、邪悪な妖怪に襲われる心配はないのだ。








「お帰りなさいませ、姫様」



『雪仁さん。ただいまです』





水銀の髪をした男が桜の前に現れた。




彼は雪男の“雪仁(ゆきと)”。

桜の母である妖狐の側近だった妖怪。



常に落ち着いていて物腰が柔らかくて、桜が頼りにしている存在である。







「姫様、お手紙が届いております」



『え、私宛てに?』





京都に知り合いがいたとしても、花開院家の人たち。


そんな彼らが自分に手紙を渡すとも思えない。



雪仁から手紙を受け取り封筒を見ても、自分の名前以外、封筒には何も書かれていない。





封筒を開け、中を見てみると、








『…舞姫?』



「ご存じありませんか?」





その問いかけに「はい」と答え、聞いたことのない名に首を捻る。





『(舞姫…)』





名前からして、お姫様みたいだと思った。






「お手紙には何て書いてあるのです?」





手紙を開けて中を確認しるが、







『“お会いしたい”…

それだけしか書いてませんね』






脅迫文ではなさそうだが、更に疑問が浮かんだ。







『(何で私に会いたがっているのでしょう?)』






考えれば考えるほど、何故この手紙が送られてきたかが分からなくなる。




舞姫という人を桜自身は知らないが、相手は知っている。


そこもまた不思議で仕方ない。











「…少し調べてみた方がいいかもしれませんね」










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