『淋しがり屋の破壊者』

□Prolog
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――どうしてあんなに凶暴な子が…





――ここからいなくなればいいのに…





――まるで悪魔の子…







ヒソヒソと聞こえる言葉。





その言葉はまだ小さな子供に向けられていた。



少年の名は“奥村燐”。


近所では「悪魔」と呼ばれている。






「俺は…悪魔なんかじゃない!!」




そう叫んでも人を怯えさせるばかり。


夕方の日差しの中でその言葉は虚空に消える。




『悪魔…?』



背後から声をかけられ、振り向くと…



目の前には同い年ぐらいの女の子が立っていた。


長く純白の髪が夕日に照らされてキラキラと幻想的だ。





『…君、悪魔くんっていうの?』



ニコニコと話しかけてこられ、ハッと我に返った。




「俺は悪魔じゃない!!」



否定する。


そしたら不思議そうな顔で尋ねた。



『違うの?』



「違う!!」



完全に否定され、納得したよう。



『ふーん…名前は何ていうの?』



「奥村…燐…」



『…そっか、燐って言うんだ』



ニッコリと笑った彼女に頬を赤くさせた。


目の前にいる少女の容姿は、自分が知っている中でも1番だ。


純白の髪に蒼い瞳、白い肌など…


まるで白ウサギが人間の姿をしているみたい。




『私は璃宮雪華、最近ここらへんに引っ越してきたの。

宜しくね、悪魔くん♪』



ワザとらしく言った。




「だから、悪魔じゃない!!!」





2人はあっという間に打ち解ける。


燐の双子の弟、奥村雪男とも仲良くなるのに時間がかからなかった。




燐と雪男が暮らしている修道院でもよく遊んだ。


彼らの父である藤本獅郎も彼女を大歓迎。

「はっはは!お前はどっちのお嫁さんになるんだ?」と茶化すことも少なくなかったが。





雪男が苛められている時は、男だろうと年上だろうと相手をするという男前な一面もあった。





だけど不思議な部分もある。


家族のことを余り話さず、家がどこなのかも分からない。





訊いたこともあったが誤魔化されて分からないまま。




それでもいいか、と思えるほど楽しかったのも事実。

















『燐!雪男!』




だけど…


5年前のある日を境に…


燐達は彼女の姿を見ることはなかった…







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