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□前に進むために
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2年前に死んだと思われたリサーナが帰ってきた。

フェアリーテイルのみんなはそれをナツ同様に大喜び。

マカロフにはミストガンのこと、エドラスで起こった出来事をしっかりと報告した。
夢のような話だが、マカロフは疑いもせず信じ、無事帰ってきて何よりだと帰還を喜んだ。




リサーナの帰還と、新たな仲間の歓迎も兼ねて、フェアリーテイルはどんちゃん騒ぎ。
いつものような気がするが、いつも以上に騒がしいギルド。
それでこそフェアリーテイル。






「ねえねえ」




『……!』






リサーナが明るくルカに声をかけた。



それに驚いたのか、目を丸くしてリサーナを見ている。






「やっぱりすごーっく可愛い!!初めて見た時からずっとそう思ってたの!!」




『っ!!?』





リサーナは辛抱堪らないとルカに抱き付いた。
彼女の行動にギョッとして言葉を失う。





「あたしリサーナ!」




『ルカ…です』




「ルカね!近くで見るとますますべっぴんさん!髪の毛さらさら〜!肌きれーい!」




『あ、あの…』





興奮しきっているリサーナに、戸惑うばかりのルカ。


初対面に対してなぜこんなに親しく接せられるのか。

自分には無理だ。

人見知りスキルを発動しているルカに対して、人懐っこいリサーナは彼女を可愛い可愛いと愛でている。






「おいリサーナ。それぐらいにしてやってくれ」




『!…グレイ』




「えーっ、まだルカと少ししかしゃべってないのよ?」




「一方通行だったじゃねーか。こいつはぐいぐいこられると逃げたくなる質なんだよ」




「…ふふっ」




「んだよ?」




「グレイってば、ルカのことよく分かってるのね〜。ナツと喧嘩ばっかりしてたグレイが2年で…あらあら」




「っそんなんじゃねーよ!!」




「あはは!照れない照れない!」






会話についていけないルカは2人の様子を傍観するしかない。



リサーナはニヤニヤとグレイをからかっている。
それにムキになって赤面しながら怒鳴っている彼に首を傾げた。






『(何をムキになってるのか…)』






ジュビアが乱入してくるまで、リサーナとグレイの公論は続いたという。













































騒ぎ疲れたのか、みんな床や机の上、様々な場所で寝てしまった。


ルカは自身が寝泊まりしている医務室で、眠っているメーベルを膝の上に乗せながら唄を口ずさむ。


月明かりで照らされただけの部屋。
この静けさは余り好きになれなかったけど、今はメーベルもいるからそうでもない。
だけど、昼間が考える暇もないくらい騒がしい分、夜、静かになると色々と考えてしまうんだ。















“愛してる。これから先も、俺は君のことを愛してるよ”















…彼は今も、牢の中で私を想ってくれているのだろうか。









『(はあ…、懲りないなぁ…私も)』






ミストガンと別れて、あの時のことを思い出してしまった。


同じ顔、同じ声、同じ容姿の彼との別れなんて質が悪すぎる。
神様はそんなに彼との別れを自分にさせたいのか。
そうだとしたら最悪だ。






『(…ジェラール…)』







―――彼を思い出にするには、まだ、時間が足りない。






覚悟が足りないんだ。
彼を忘れる覚悟じゃない。受け入れて前に進む覚悟。







『このままじゃ…ダメ、だよね…』






ポツリと呟いた言葉は静寂に消える。




心のどこかで彼の面影を捜し続けていた。


でも、それでは前に進めていない。


今回のミストガンの件で分かった。


自分はジェラールと2度と会えないという事実を、否定したかったんだと思う。
ミストガンを見て、ジェラールだと一瞬でも思ってしまったのがその証拠。
















“…さよなら、ルカ。俺は君のこと……忘れない。
例え、君が俺のことを忘れたとしても、俺は君のくれたものを覚えている。
俺に縛られることはない。
君は――――自由だ”


















『(…私は…)』







「ルカ!」




『!ルーシィ…、どうしたの、その顔』




「いや…あはは…寝ぼけたナツに殴られちゃって…」




『…なんて言うか、ご愁傷様』





ルーシィはルカの隣りに腰を下ろした。





「ねえ、ルカ。1つ訊いていい?」




『なに?』




「ルカってよく1人で歌ってるけど、何か理由とかあるの?」




『理由…か』






おかしそうに失笑するルカに、ルーシィは首を傾げる。






『唄っていれば、会えない人に想いが届くような気がして。最初はウィズアースに、今は、ウィズアースとジェラールに贈ってる私からの些細なメッセージ。
ま、聞こえるわけないんだけど…』




「…伝わってるよ」




『……!』




「ウィズアースにも、ジェラールにも、ルカの想いは絶対に伝わってる!!」




『…そう、だといいな』






苦笑するルカを見て、ルーシィも目を細める。


時折、彼女がとても弱い女の子のように見える時があった。
自分より、もしかしたらナツよりも強い女の子なのに、おかしな話だと思うが、実際に目の前にいる彼女は弱っている。





…自分に出来ることは何かないか。







『ルーシィ』




「ん?」




『…―――頼みがあるの』







そう言ったルカの瞳には強い意思が見えた。

真っ直ぐ、前だけを見る瞳。





…一体、何だろう。













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