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□あなたの元へ
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――アースランド
「きゃあああああ!!!!」
「わああああああ!!!!」
空から落下していく。
死ぬ、死んでしまう。
今までで一番命の危機を感じている。
「ふぎゃ!」
ナツを下敷きにして、何とか皆無事に生還した。
『帰ってきたんだ…、私達の世界に』
雨が降っている。
エドラスに行く前も、雨が降っていた。
フェアリーテイル、マグノリアの街は元通り。
ミストガンの言った通りだ。
「待て、まだ喜ぶのは早い。人々の安全を確認してから「大丈夫だよー!」
生真面目なエルザの言葉を、何者かが遮った。
その声を辿って上を向けば、エクシード達が空を飛びまわっている。
エクシードがアースランドに来ていることに唖然とするナツ達。
「ルカさん…!」
『!…メーベル!!』
「良かったっ…ルカさんが無事で、本当に良かったです〜…」
彼女の胸にダイブする。
ボロボロの体にかなり応える勢いだったが、何とか笑顔を保つ。
喜びで抱きつかれたと思えばうれしいものだ。
『メーベルも、無事で良かったよ』
なぜここにいるのかという疑問は後回し。
今は、再会を喜びたい。
*
「冗談じゃないわよ!こいつらは危険!エドラスに帰すべきよ!」
シャルルのキツイ言葉。
彼女はエクシードという存在に不信感を抱き、
エクスタリアの危機を伝えに行ったにも関わらず、信じてもらえなかった。
謝罪の言葉を口にするエクシード達。
「そんなことはどうでもいいの!あんた達は私にドラゴンスレーヤー抹殺する使命を与えてアースランドに送り込んだ!!」
「…まだ、きちんと説明してませんでしたな」
四長老の1匹が話しを切り出した。
時は6年前に遡る。
女王・シャゴットには未来を視る力がある。
その力で、ある未来を視た。
エクスタリアが堕ちる未来を。
そしてシャゴットはある決心をした。
――未来ある子供を、別世界に逃がそうと。
それが本来の目的。
ドラゴンスレーヤーの抹殺というのは表向きの作戦に過ぎなかった。
「人間のアニマを借り、私達の作戦は成功しました。
…しかし、たった1つだけ、計算外のことが起きたのです。それは、シャルル、あなたの力」
「……!」
「あなたには、私と同じような予言の力があったのです」
そう言われて思い当たる点がいくつもあった。
城の地下通路。
あれはナツ達が捕まる未来の通路だったのだ。
「しかし、それは無意識に発動しているようで、あなたの記憶を混乱させたのです」
エドラスの断片的な未来を視たシャルルは、ドラゴンスレーヤー抹殺を使命だと勘違いした。
ありもしない使命に囚われていたのだ。
シャルルは自分の力を自覚し、今までのことは自分の力が暴走したことによる汚点だと認め、彼らがアースランドで生きていくことも認めた。
「女王様…、ボク…その…」
メーベルが申しづらそうに目を泳がせる。
心情を分かってか、シャゴットはクスッと笑みを浮かべた。
「ルカさんと、一緒にいたいのですよね、メーベル」
『……!』
俯いていた視線をシャゴットに合わせて、今までにないくらい真っ直ぐな瞳をしている。
「っぼ、ボク!ルカみたいに強くなりたいです!」
「…それが聞けて、良かったわ」
シャゴットはルカに頭を下げた。
「ルカさん。メーベルはあなたをとても慕っています。
どうか、この子を、宜しくお願いします」
『っそんな、滅相もない!…メーベルは、責任を持ってお預かりします。
私も、メーベルとまだまだ一緒にいたいですから!』
それを聞いて安心したように微笑む。
我が子の旅立ち。
しかし、誇らしい。
目標にする人を見つけ、未来に向けて向かっていく姿は何とも眩しく、立派なんだろう。
次に会う頃には、今より立派な姿を見せてくれるだろう―――。
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