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□バイバイ、エドラス
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エドラスの魔力を吸収して姿を変えるドロマアニム。
地響きが起こるほど禍々しい魔力を纏い、ナツ達を追いつめた。
『水竜の、咆哮ー!!!』
ルカの放ったブレスがドロマアニムに直撃し、巨大な体が傾き、地面に倒れた。
不意打ちの攻撃だったが、その威力は凄まじい。
倒れているナツ達の前に立ち、ドロマアニムを睨みつける。
その瞳は怒りで満ちていた。
「ぐっ…ルカ!!貴様ァ!!」
起き上ったドロマアニムはルカに向けて拳を振るう。
その拳を身を軽く横にずらしただけで避ける。
『…エドラスの民は、魔力がないと苦しんでいる。なのに、その王様が魔力を独り占めしていいと思ってんの?』
「王が国民から国税を取るのは当然であろう?」
『この国のお姫様を追いつめるのも、当然だっていうわけ?』
「ふん。ルカはこの国に貢献したいと言っておった。だからワシがその手助けをしてやろうとしたまでよ」
『っ何が手助けよ…ふざけないで!!!』
…あの時、見つけたノートには続きがあった。
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もし、この手帳を見つけた人がいたら、王様を止めて。
エドラスを救ってほしい。
私の大好きな人たちが生きているこの世界が、大好きなの。
大切で、みんなの笑った顔を失いたくない。
この手帳を見つけた人が良い人ならいいな。
…本当はね、みんなとずっと一緒にいたい。
みんなと笑って、ケンカして、それでもまた笑って、普通に暮らしたかった。
お別れしたくない。
ずっと、一緒にいれたら良かったのに。
ごめんね。
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紙に濡れた痕が残っていた。
きっとルカはこれを書いている時に泣いていたんだ。
死にたくない。
まだ生きたい。
生きて、みんなと一緒にいたい。
そんな想いが文章から流れ込んできた。
『こっちの私が託したもの、絶対に成し遂げてみせる!!』
そう宣言する彼女の傍らにナツ、ウェンディ、ガジルが並ぶように立った。
「独りじゃねーぞ、ルカ」
「そうです!私もサポートします!」
「俺だってぶっ飛ばしたくて溜まんねェんだ!ぜってー倒すぞ!!」
『うん!!』
ドラゴンカルテット。
4人のドラゴンスレーヤーが、立ち上がった。
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城内にあるアニマを創りだす部屋に足を踏み入れているミストガンとリリー。
「王子、一体何を…」
「…私は長いことアースランドを見てきた。争いはあるが、豊かな世界だった。きっと受け皿になってくれる」
「っ王子、まさか!!いくら何でもそれは悶論過ぎる!!」
「この世界の争いを根絶するには、これしかない。
人と人がきちんと向き合える世界を創るんだ」
彼女が望んだ世界。
…見せてやりたかった。アースランドを。
きっと蒼い瞳を大きく見開かせて、大袈裟なまでにはしゃぎ、その顔を綻ばせただろう。
「――アニマを逆展開し、この世界全ての魔力を消滅させる」
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