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□あの時の少年
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王都からやってくる無数の兵士とレギオンたち。
それを指揮するのはエドラスのエルザ。
裏切り者であるリリーを撃ったのも彼女である。
落下したリリーは、1匹のエクシードが助けに行った。
エドラスのエルザ、ナイトウォーカーは、自分を欺いたアースランドのエルザ、スカーレットへの復讐心で染まっていた。
「エドラス王国王子であるこの私に、刃を向けるつもりか。エルザ・ナイトウォーカー」
「っ…」
『(…何か、王子様っぽい)』
一瞬引いてくれる気がしたが、
地を這いずるような声が辺りに響いた。
「ふははははは!王子だと?笑わせるでないわ!
ワシは貴様を息子などとは思っておらんわ」
『(この声…)』
「王様の声だ!」
「え、どこ…?」
辺りを見渡しても王の姿は見当たらない。
「7年も行方を眩ませておいて、よくおめおめと戻って来れたものだ。
ルカ…いや、お前はこちらのルカではなかったな。
こっちの貴様も行方を眩ませ、今では生きているのかも分からぬ」
『っ誰のせいだと…!』
まるで他人事のように言う王に、腹が立つが、その声がどこから発せられているのか分からないので、
その怒りの矛先を向ける方角を失っている。
「ジェラール、貴様がアースランドでアニマを塞いで回っていたのは知っておるぞ。
売国め!お前は自分の国を売ったのだ!」
「…あなたのアニマ計画は失敗したんだ。もう戦う意味などないだろう。
あなたはルカが命を絶った意味を、まだ理解していないのか!」
『ミストガン…』
だが、その想いは王には届かない。
地を見れば、ある場所が光り、魔力で大気が震えている。
「これは戦いではない。王に仇なす者への報復。一方的な殲滅…」
現れたのは何かの繭のようなもの。
魔導兵器だというのは分かるが、それ以外がまったく未知のものだ。
「ワシの前に立ちふさがるつもりなら、例え貴様であろうと消してくれる!跡形もなくなァ!!!」
「父上…」
「父ではない。ワシはエドラスの王である!」
繭が徐々に開かれた。
大気が震えるほどの魔力に、肌がビリビリと痺れる。
「そう…貴様をここで始末すれば、アースランドでアニマを塞げる者はいなくなる。
また巨大なラクリマを創り上げ、エクシードを融合させることなど、何度でも出来るではないか!
ふはははは!王の力に不可能はない!!王の力は、絶対なのだー!!!」
姿を見せたのは竜のような魔導兵器。
「おお…あの姿、あの魔力…」
「間違いない…」
「何ということじゃ…」
「あれは…あれは…」
「…ドロマ・アニム!」
エクシードの四長老や女王は顔を青ざめながらそう口にする。
『ドロマ・アニムって…?』
「…ドロマ・アニム。こっちの言葉で“竜騎士”を意味し、ドラゴンの強化走行だと」
『っドラゴン…!』
対魔戦用魔水晶、ウィザードキャンセラーで全身を覆われており、魔法を無効化させる仕組み。
あの中で王が操縦しているのだとココが言った。
「我が兵たちよ。エクシードを捕えよ」
王の命令で兵士たちが動き出した。
「マズイ!逃げるんだ!!」
逃げ惑うエクシードたちに放たれる光の光線。
それを受けたエクシードがラクリマに変えられ落下していく。
「王国軍からエクシードを護るんだ!ナイトウォーカーたちを追撃する!」
「あのデカブツはどうする?」
「相手にするだけ無駄だよ〜…魔法が利かないんだから」
「交わしながらいくしかない!今のエクシードは無防備だ!俺たちが護らないと」
“護る”という言葉で、ハッとなり辺りを見渡す。
ルカが捜しているのは護ると約束をしたエクシード。
混乱したエクシードの中で1匹のエクシードを捜すのは困難だが、
彼女は必死に目を凝らす。
そして薄いキャラメル色のエクシードの姿が目に入る。
『メーベルっ…!!』
名前を呼べば、泣きながらこちらに飛んでくるメーベル。
後少し。
そう思った瞬間、
『―――っ!!!』
メーベルに光の光線が直撃し、ラクリマに変わってしまった。
ラクリマになったメーベルを持ったルカは今にも泣きそうな顔でラクリマを抱きしめた。
「人間は1人として逃がさん!全員この場で塵にしてくれる!!」
ドロマ・アニムから放たれた光線がナツたちが乗っているレギオンに向け放たれた。
その前に立ちふさがるミストガン。
魔法で光線を跳ね返すが、
ウィザードキャンセラーで覆われた鎧には傷1つ付かない。
もう1度放たれた光線がミストガンをレギオンから振り落とした。
『っミストガン…!!』
「ふっはははは!!貴様には地を這う姿が似合っておるぞ!
そのまま地上で野垂れ死ぬが良いわ!!」
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