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□あの時の少年
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竜鎖砲が接続されたラクリマは、速度を上げてエクスタリアにぶつかろうとしている。


それを止めようと奮闘するナツ達。


手で必死に押し返す。


潰されそうなほどの圧力だが、諦めることはない。




『メーベルの故郷、帰る場所を、失くしたりなんてしない!!
絶対に諦めないんだから!!!』




フェアリーテイルも、エクスタリアも、2つとも守ってみせる。




『……!』




エクスタリアから放たれる無数の光。




「あの光は…」


「…みんなだ。みんなが、来てくれたんだ…」




メーベルの目には感動と驚きが入り混じった涙が流れた。

魔力の証の翼を輝かせたエクシード達。

エクスタリアがようやく1つになり、自分達の国を守ろうとナツ達と一緒にラクリマを押し返す。






そんな彼らの姿を見て、リリーは過去を思い返した。







**** **** **** ****







「リリー!なぜ人間の子供などを救った!?」


「大きな怪我をしていたので」



リリーの腕の中には小さな子供。



「馬鹿者!それをエクスタリアに連れてくるとは!何たる不始末!!」


「しかし人間とはいえ、怪我をしている者を放っておけません!」


「掟を忘れたじゃあるまいな、リリー!」


「――貴様を堕天とし、エクスタリアから追放する!!」



そしてリリーは故郷を追われた。


エクスタリアをじっと見つめるリリーを見て、助けてもらった幼い少年はそんな彼を見た。



「何だ、気にするな。お前のせいで追放されたわけじゃない。

まず、お前を送り届けないとな」



そう言いながら少年の頭を撫でた。









**** **** **** **** ****





片翼の女王が落下したのを、リリーが受け止める。


久しぶりに見た彼に、女王シャゴットや彼を追放した四長老が目を見開く。



「…女王様。嘘を吐くのに、疲れたのかい?」



彼の気遣いの言葉に、女王は目を伏せた。



「ごめんなさい。私…」



何かを言いかけたが、顔にかかった雫で顔を上げ、彼の顔を見る。


リリーの目から涙が流れていた。



「俺も、どんなに憎もうとしても、エクスタリアは、俺の国なんだっ…!!」


「リリー…」


「けど、もう無理だ。
これだけのエクシードが束になっても、こいつは止まらねぇ。

みんなすまねぇ!!!俺のせいだ!!!

俺なら止められた!人間たちを!止められたんだー!!」




そう嘆くリリーに女王は、




「――…想いは、きっと届くわ!」





想いの力。


国を想い、仲間を想う力は、どんな力よりも純粋な力となる。





『お願い!止まってぇ―――!!!!』






エクシードと人間の力が1つとなり、巨大ラクリマを押し返すことが出来た。


しかしその瞬間、ラクリマが強い光を放った。


激しい突風が巻き起こり、飛ばされないようにしがみ付くが、




『わっ…!!』




ルカもまた飛ばされ、他のエクシードたちも飛ばされていく。


翼のあるエクシードたちは、ナツたちを掴んで落下を阻止した。


強い光を発していたラクリマに目をやれば、ラクリマは消え、竜鎖砲の鎖も消えていた。




「ど、どうなったの…」




戸惑いが辺りに広がる。




「アースランドに帰ったんだ」




聞き覚えのある声に上を見上げれば、白いレギオンに乗ったミストガンがいた。


彼の腕には先ほどの突風で飛ばされたルカが横抱きにされている。


彼女を捜していたメーベルは、無事を確認出来てホッと息をつく。


ミストガンに抱き上げられているルカは突然の出来事に目を真丸くしていたが、
状況を理解して足をバタつかせた。


彼の腕から下り、なぜここにいるのかという疑問からまじまじと彼を見つめてしまう。




「全てを元に戻すだけの巨大なアニマの残光を捜し、遅くなったことを詫びよう。

そしてみんなの力がなければ間に合わなかった、感謝する」




「元に戻したって…?」




「そうだ。ラクリマはもう1度アニマを通り、アースランドで元の姿に戻る。

―――全て終わったんだ」





ミストガンの言葉に、みんなが笑みを浮かべる。


守れた。


その一心で笑った。




「リリー、君に助けられた命だ。…君の故郷が守れて良かった」




顔を覆っていた布を取ったミストガンを見たリリーは、あの時助けた少年の笑顔を思い返す。


あの時の少年。


そう、リリーが助けた少年とは、ミストガンのことだった。


ふと、バトル・オブ・フェアリーテイルの時、ラクサスが言いかけた言葉を思い出した。




“アナザー”



確かに彼はそう言った。





『アナザー…ジェラール…』





エドラスの、もう1人のジェラール。





「…ええ、ありがとうございます。“王子”」




リリーが涙を流しながら言った。

ココも「王子が帰ってきたよ〜」と涙を流していた。





『(王子!?…て、あの…7年前に行方不明になったっていう王子様!!?)』




ようやく分かった。

彼が自分を見て懐かしむ目をした理由。


エドラスのルカと、自分を重ねて見ていたのだ。


自分と同じように。








「うああぁ…!!!!」






『っリリー!!!』








リリーの腹部が光の光線によって貫かれた。







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