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□エクスタリア
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『……私、ここの王様大丈夫かなって心配になってきたよ』




目の前に広がる煌びやかな世界。

間違いない。

“遊園地”が城内に広がっている。

なぜ城内に遊園地があるのか、それは王の趣向というものだろう。



しかしメーベルを見れば、




『(えぇ〜…何そのキラキラした目は)』




もしかしたら遊園地を見るのは初めてなのかもしれない。

本来の目的を忘れてなければいいのだけどと思いながら、足を踏み入れた。

ここにヒントが隠されている気はしないが、何となくノリでだ。



自分の足元でトコトコついてくるメーベルは辺りを興味深そうに見渡している。




「姫!人間の世界はキラキラがいっぱいあるんですね!」


『…まあ、ね』




何とも曖昧な返事を返した。


自分も未知のものを前にした時、今のメーベルと同じで誰かに言ってた気がする、と懐かしんだ。




『……!!』




近くで爆発音が聞こえたと思えば、アトラクションのいくつかが崩れている。


向こうに誰かがいる。


それも戦っているんだと状況を理解した。




「姫…、向こう…」



先ほどまではしゃいでいたメーベルだが、すぐ傍で戦闘が行われているのだと分かると、
すぐさまルカの足にしがみついた。



『ルカでいいよ。
行こう、何か分かるかも』


「っ……」


『縛られてる私が言っても説得力ないけど、大丈夫。
魔法なしでも強いんだよ?私』




実際に素手でナツを殴り飛ばしたことあるくらいだし。

ルカの言葉に、メーベルが笑顔で頷く。




『(誰が、戦っているの…?)』




そう思いながら、現場へ走った。









「ナツ―――!!」







『……!』





遊園地内に響く高い声。


上を見上げれば、ジェットコースターにナツとルーシィの姿を見つける。


アレは確かに、自分の知っているナツとルーシィ。


心の中で、やっぱりと思いながら、口元に自然と笑みが浮かんだ。

1人じゃない。

そう感じると、今までの不安感が嘘みたいに消えていった。





『グレイ…!』




グレイの後ろ姿。

氷の造形魔法を使っているのを見れば、アースランドのグレイだと分かる。




「ルカ!!」



グレイがルカに駆け寄り、彼女の身体を縛っていたものを凍らせ砕いた。



『ありがとう』


「お前、ルカ…なんだよな?」


『殴って確かめてあげようか?』



にこやかに冗談を言えば、「ルカだな」とグレイは納得してくれた。




「おやおや〜、姫様がなぜここに?」


『!…シュガーボーイ』


「しかも何やら敵さんと親しいようで。
もしかして姫様は…“姫様じゃないのかな?」


『(意外と鋭いな)』




もう正体がバレても仕方ない。

偽る必要も、どこにもないのだから。




『そう。私はルカ・シヴィラじゃない。
アースランドの魔導士、ルカ・フィーリアムよ』


「んー、なるほどね。今になって姫様が戻ってきたわけがようやく分かった。
美しい姫君をもっと愛でていたかったが、それももう叶わないのか」


『叶わなくて何より』




ふと、足元にいるメーベルに目をやる。

戦闘をすれば、メーベルを巻き込んでしまうと思い、「離れてて」と声をかけ、シュガーボーイを睨みつけた。




『王がやっていることは、間違っている』


「んー、それは聞き捨てならないね」


『誰かの命を奪って手に入れるものなんて、虚しいだけよ。
何も手に入れられない。
奪った瞬間、大切なものを失うの。

命を道具みたいに言ってる王は、絶対に間違ってる!!!』




言い切ったルカに、グレイも笑みを浮かべて肩を並べる。


メーベルは彼女の背に、自分の思い描いていた強さを見いだした。
強く、真っ直ぐで、何よりも美しい。
胸の内に強い尊敬の念が生まれる。





『私は、こっちのルカの願いを叶える。
今そう決めた』




やはり、彼女の澄んだ蒼い眼は、真っ直ぐ相手を見ている。





「うちのお姫さんは頑固だからな。
この様子じゃ、無理でも止めるだろうぜ?
ま、俺も同感だがな」


「…そのようだね、アイスボーイ」













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