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□更なる魔力を求める
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このままでは自分もラクリマにされてしまう。
そうしたら、皆を助けることが出来ない。


どうにかして逃げないと。




『(ご高齢の方には優しくしろってマスター・ボブに言われてたけど…
今回ばかりは仕方ない…よね)』





決心したルカは、唯一自由になる足でバイロに足払いを決め込んだ。

足払いされたバイロはそのまま床に倒れた。

多少の良心は痛んだが、逃げるなら今しかないと思い、全力疾走でバイロから逃げる。

後ろから「待て」という言葉が聞こえたが、大人しくラクリマになるわけにはいかない。









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全速力で走っていると、場内が騒がしくなっていた。


どうやら堕天2匹が囚人を連れ去ったとか。


確証はないが、その堕天がハッピーとシャルルなような気がした。



空にはエクシードと呼ばれる種族が堕天を追ってきている。

地上には王都の兵士たちがいるため、囚人たちはきっと逃げ場を失っているに違いない。

魔法を封じられている今の自分に何が出来るか分からないが、捕まりそうなのがルーシィなら助けなければ。




『な、なに…?』




辺りに響き渡る音。

「コードETD発動!!」という声と共に、堕天を追ってきたエクシードに向かって強い光が放たれた。




『(こっちの世界では、人間にとってエクシードは天使や神様のような存在なのに…

何でエクシードを!?)』




光をうけたエクシードは、ラクリマへと姿を変え、地面に落ちた。


神に反逆的行動をとってしまったことに、戸惑いや恐れが広がる。





「この世に神などいない!!

我ら人間のみが有限の魔力の中で暮らし、エクシード共は無限の魔力を謳歌している。

なぜ…、なぜこんなにも近くにある無限を我々は手に出来ないのか。

支配され続ける時代は終わりを告げた!
全ては人類の未来のため!豊かな魔法社会を構築するため!

我が兵士たちよ!
共に立ち上がるのだ!!

コードETD、エクシード・トータル・デストラクション…“天使殲滅作戦”を発動するー!!!」




「「「お―――!!!」」」




王の言葉に皆が賛同する。


だが、ルカは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。




『(エクシードだって、生きてるのに…!!)』




同じ世界に住む者同士で、これから争いが起きる。

それを止めたい。





「うえぇぇん…」


『……?』




幼い泣き声。

辺りを見渡すと、キャラメルより少し薄い色をしたエクシードがいた。




『…何で、ここに…』


「ひぃ!」


『あ、えーと、大丈夫。私はあなたに危害を加えないから』




安心させるように笑いかけると、ひどく怯えていたエクシードは少しだけ落ち着きを取り戻した。


その様子を見て、ルカもホッと一息つく。





「いたぞ!逃げたエクシードだ!!」




数人の兵士が走ってこちらに向かってくる。


エクシード、ということは、目の前にいる子を狙っているということだ。


ルカは怯えているエクシードの手を掴み、兵士たちから逃げるように走り出す。




「姫様!?」

「なぜエクシードを…!」

「王の命令ですぞ!!」




『っ私には関係ない!!』




仲間を目の前でラクリマに変えられて、このエクシードは混乱と恐怖に苛まれているに違いない。

自分も、そうだったから。




『…護るから。あなたを』


「……!」




“護る”


その言葉がエクシードの胸の中に深く沈み込む。



もうダメだと思った。



だけど、自分の手を掴んでくれた人は、信じてもいい気がした。









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