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□更なる魔力を求める
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『…え、侵入者?』





ココが急いで来たものだから何事かと思ったら、あろうことか侵入者が入ったのだという。


数は3人とのこと。


ルカはふと直感的にルーシィがその中にいる気がした。


もしルーシィならば助けに行かなければ。






『その侵入者は、今は牢屋にいるの?』



「はい。今は牢屋に収監しています!」



『そう…、そこに案内してもらってもいい?』



「えぇ!?ダメですよ!!ルカ姫様が行くような所じゃないです!!!」





全力でダメと言われ、このまま行きたいと言い続けていても無駄なような気がした。





『…分かったよ、ココ』



「陛下はルカ姫様の様子を大変気にしていらっしゃいます。
ですので、陛下のためにも大人しくしてて下さい」



『………』





永遠の魔力を求めているエドラス王が、小娘ひとりを気にしている余裕があるとは思えない。


何かあるんだ。

下の者に言えない何かを、王は隠している。



ずっと感じていた違和感。


その正体は未だによく分からないままだが、そこは確かなことだ。





こちらのルカに、一体何があったのだろう。






『(教えてくれないなら、自分で捜しに行く)』






そう決意したルカはココが去ったのを見送り、そっと部屋を抜け出した。




広い王宮の中、1つの牢屋を見つけるのは困難。

方向音痴とまではいかないが、人捜しが苦手なルカは、あちこち見渡しながら捜すことになった。





『気が遠くなるな…』





日が暮れるまでに、その牢屋に辿り着けるのだろうか。






「おやおや姫様。こんな所で何をしておいでで?」



『……!』





前に会った変わった形の髭が特徴の小柄な老人が背後に立っていた。





『(確か…バイロ、だったっけ…)』





このまま捜しても埒があかないと感じたルカは、じぶしぶバイロに尋ねてみることにした。





『侵入した3人って、どこにいるの?』



「おや?侵入者をお探しでしたか。ぐしゅしゅ」





この笑い方は苦手だ、と感じたが、引くことは出来ない。





「いいでしょう。侵入者の元に連れて行ってさし上げましょう」



『!…あ、ありがと』



「いえいえ。姫様のためです」





ルカの横を通り抜けたバイロは、迷いのない足取りで進んでいく。


その後をついて行った。








__________

_______

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どんどん王宮の奥に進んでいく。





『バイロ。どこまで行くの?』





そう問いかけてもバイロは足取りを止めず、ただ前に進んでいく。



何か変だと思ったが、もう遅かった。





『っ!!?』





体に纏わりつくネバネバしたもの。


それに拘束され、ルカは床に倒れ込んだ。


彼女が倒れ込んだ音を聞いたバイロがようやく振り向き、その口元に不気味な笑みを浮かべていた。



魔法を使おうとしようとしたが、なぜか魔法が使えない。



この拘束しているものが自分の魔力を封じているのだと分かった。





『っバイロ!!どういうこと!?』





キッとバイロを睨む。



まさかアースランドのルカとバレたのか。



心臓がドクドクと動き、自分の動揺を表しているかのようだ。






「7年前、あなたは王都から姿を消した。

“魔力となり、この世界に取りこまれることを恐れて”」




『……え』




「ああ、記憶が混乱してらっしゃいましたね」





どうやらアースランドのルカだとはバレていないようだが、彼の言葉で新たな動揺が生まれた。



彼の言葉を理解しようとすれば、何かが引っかかった。







エドラスの人間には、アースランドのように体内に魔力を持っていない。
ラクリマを組み合わせた道具を魔法として使用する。





だが、今の話ではまるで―――…








「幼い頃、体が弱く、それを治すためにラクリマを体内に埋め込まれた姫様は、道具を介さずに魔法を使うことが出来た。

普通ならラクリマを埋め込まれれば拒絶反応で死に至る。

姫様は拒絶反応を中和し、体の一部とした。

あなたは特別な存在なのです」







ラクリマが埋め込まれた。

アースランドではよくある話だが、エドラスでは特別なようだ。







「そして7年前、魔力の枯渇により、王はある決断をされた」



『…ある、決断…?』



「アニマをアースランドに放ち、魔力の抽出の始めとして“ルカ・シヴィラ”をラクリマに変えエドラスの魔力とすると。

まあそれを知っているのはワシと陛下だけですけどな」




『……!!!』




「陛下の命令です。
7年前は逃したが今度は逃さないと陛下はおっしゃった。

おかえりなさいませ、ルカ姫様」







そこでようやく気付いた。



この国の王は、娘ひとりの魔力を欲して、死に追いやった。





エドラスのルカがあの手帳に残した理由が分かり、奥歯を噛みしめる。







『(こっちの私は、みんなの幸せを願ってただけなのにっ…)』










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