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□もう1人の自分
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謁見室のような場所に連れてこられ、目の前の高い場所に座り、自分を見下ろしているのは、エドラス国王ファウスト。
『(あの人が、この国の王様…)』
王というだけあり、威圧感は抜群だ。
「ルカ…、戻って来たのか」
『えっ…は、はい!』
何と言ってよいか分からず、取り合えず返事をした。
ファウストは顔色1つ変えずにルカをじっと見ていた。
その様子にデジャブを感じてしまう。
『(この世界の人は、人の顔をじっと見るのが好きな人が多いのかな…)』
「陛下ー!陛下ー!へーいーかー!」
こちらに走ってくる女の子。
ルカのいる地点より少し後ろ辺りで止まり、王に向かって敬礼をした。
「予定通り4日後には、あの巨大ラクリマから魔力を抽出できるとのことです!」
『なっ……』
期限をいきなり言われて言葉を失った。
4日後、皆の命に関わるカウントダウンだ。
『(後4日で、私1人でどうにか出来るのかな…)』
余りにも短い期限に弱音が出てくる。
しかし、どうにかしなければいけないんだ。
そう思い、ファウストを真っ直ぐ見上げた。
『(絶対に、フェアリーテイルの皆を魔力なんかにさせないんだから!)』
「…足りんな…」
「え?ほへ?陛下、今何と?」
「あれでは足りんと言っておる」
「お言葉ですが陛下、あのラクリマはアースランドの魔法都市1つ分の魔力なのですよ!
この先十年相当の我が国の魔力として利用できるのですよー!」
「…我が偉大なるエドラス王国は、有限であってはならぬのだ」
『……!』
「…よこせ……もっと魔力をよこせ…
ワシが求めるのは“永遠”!永久に尽きぬ魔力!!」
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謁見室から出たら、リリーがいた。
「姫、お部屋にご案内いたします」
『い、いいよ!そんなことまで!』
「今は姫が使っていた部屋が埃まみれですので、別の部屋に…」
エドラスの自分が使っていた部屋という言葉にルカが素早く「その部屋に連れてって!」と声を上げた。
…その部屋には、何か情報があるかも
そう思ったからの申し出だ。
姫と王子が7年前の同じ頃に行方不明になった理由なども気になる。
何かあったに違いない。
リリーもその申し出には驚きつつも「分かりました」と答えた。
『(何とも言えぬ罪悪感…)』
自分はこっちのルカじゃない。
それを知らない彼は、自分にここまで尽くしてくれている。
…まったく、こっちの私は何してるのか
こんなに心配している人(猫)がいるのに、とルカはしみじみと思った。
『(ルーシィは大丈夫かな…)』
あのルーシィのことだ、きっとどこかで困っているに違いない。
そう思うと気が気じゃない。
残念だが、ルーシィがどこにいるか分からない以上、彼女を助けに行くなど不可能だ。
彼女の幸運を祈るしか出来ない。
『(思えば、ミストガンは何してんだろ)』
自分たちが必死になっている時に休んでいたりしたら、グーパンチの1発や2発ぐらいはお見舞いしてやろう。
そう固く心に決めた。
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