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□エドラス
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王都の中心である城に着いたルカ。
王がいる城ということもあってか、門の前には門番がおり、城の周りには警備の者が所々にいる。
いつもなら「正面突破」という手を使うところだが、今回は争うために来たのではない。
状況もよく理解していない今にそれは無謀極まりないだろう。
『あの、すみません』
門番に声をかけた。
『王に謁見をお願いしたいです』
一応は丁寧に申し出る。
話し合えば何とか通してくれるのではという最終的な考えて動いた結果、門番たちは不審なものでも見るような目を向ける。
逆に怪しまれることになっていた。
「王に?貴様、王の知り合いか?」
『え、えーと…知り合いと言いますか、何と言いますか…』
つい先ほど別の世界から来た自分が、この国の王様と会ったことがあるわけないだろう。
仮に「私別の世界から来てミストガンって人に王都に向かえと言われて、まずは王様に会おうと思ってきました」と、本当のことを話したらどうだろうか。
兵士たちの反応は「あ、この子大丈夫かな」と頭がおかしい発言をした女への同情の眼差しに変わるはずだ。
いや、絶対にそんな目で見られる。
……どう言いわけをするべきか
悶々と考えていると、門が軽く開いた。
『……っ!』
門の中から出てきたのは人ではない。
「どうした、何かあったのか」
自分の身長より遥かに大きい背丈。
左目に傷のある、黒豹に似た人間と同じ言葉を話す猫。
「あっ、いえ、この娘が王への謁見をと申しておりまして…」
「王に謁見だと?」
怪訝そうな顔をした黒豹はルカに視線を移す。
そして目を大きく見開いた。
まるで幽霊でも見るような目に余り良い感じはしない。
「…姫っ…」
余りにも衝撃的な言葉に一瞬思考が停止する。
……姫?私が?
残念ながら自分には姫と呼ばれるような高貴な身分などない。
ヒビキやブルーペガサスの皆が「どこかのお姫様のように可愛い」という寒い言葉は聞いたことはあるが、余りに寒過ぎてスルーしたことならある。
姫とは高貴で可憐で美しい女性のことだ。
自分とは正反対。
真逆の性質だ。
……聞き間違いだな、と納得するルカ。
「ルカ姫様!!!」
『………え』
2度目ともなると聞き間違いだと言い逃れは出来ない。
目を点にして黒豹をまじましと見つめる。
彼もまじまじとルカを見つめ、彼女の肩を掴んだ。
「今までどちらにおられたのですか!!?」
『ど、どこにおられたって…』
急に詰め寄られて驚くばかりだ。
急にフェアリーテイルが消えて、ミストガンに会い、まったく未知の別世界に来て、大きな猫に詰め寄られればパニックの限界を超えるのも必然だろう。
もっとも驚きなのは…
エドラスの自分が、王都の“お姫様”ということだ。
.→To be continued...