『闇の中の人形(マリオネット)』
□ギルド最強の魔導士
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ギルダーツはナツに土産があると言って壁から出て行った。
ナツもギルダーツの真似をするように壁を破壊して出て行った。
『仲良いんだね。ナツとギルダーツって』
実力は天と地ほどあるが、ギルダーツはナツのことを気に入っているらしい。
余り帰ってこないギルダーツはハッピーが産まれてすぐの時にも帰ってきた。
その時はまだナツとは幼なじみの関係であるリサーナもいたのだ。
3人と1匹で色んなことをしたのだそうだ。
『何か、いいね。親子みたいで』
「そうだね」
ルーシィも微笑む。
ルカはナツが開けた穴を見て顔を顰める。
『夜の隙間風がきつそうだな〜』
「…いっそのことギルドに住み込むの止めたら?」
『うーん……ちょっとは考えとく』
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昼間と違い、夜のギルドはとても静かだ。
医務室の中は月明かりが照らし、時計の針の音だけが響く。
医務室のベットで体育座りをしながら、ルカは物思いにふけっている。
『ウィズアース……』
ナツとギルダーツを見て思い出してしまった。
自分の親であったドラゴン、ウィズアースのことを。
自分には本当の親の温もりはないは、ウィズアースの温もりはある。
あれは親の温もりだった。
『(会いたいよ、ウィズアース…)』
ドラゴンスレーヤーのナツ、ガジル、ウェンディも同じようにドラゴンに育てられた。
彼らも育て親に会いたいのだろうか。
聞かずとも答えは分かっている。
“会えるなら、会いたい”、誰しもがそう思っている筈だ。
『(会いたい……“あの人”にも)』
そんな考えが浮かび、ぶんぶんと首を横に振り、その考えを振り払う。
そして膝に顔を埋める。
『(1人になると考えてしまう…)』
声が聞きたいと願ってしまう。
抱きしめて欲しいと思ってしまう。
答えなど見つからない。
完全に忘れられる自信などない。
『もう寝よう……』
布団の中にもぐり込む。
目を閉じれば、彼の姿が脳裏に浮かぶ。
会いたいという気持ちを押し殺して、今日もまた眠りについた。
.→あとがき