『闇の中の人形(マリオネット)』
□さよなら、愛しき人
1ページ/7ページ
崩れたニルヴァーナから何とか脱出した。
しかし、そこにナツ、ルカ、ジェラールの姿はない。
皆が名前を呼び、彼らの安否を心配していた。
すると地面が盛り上がり、そこから出てきたのはホットアイだ。
そして腕に担いでいるのはナツ、そしてルカとジェラールだった。
「愛は仲間を救う、デスヨ」
「たく、ヒヤヒヤさせやがる」
苦笑い気味に笑っているグレイだが、その表情はホッとしているようだ。
「ナツさん……ルカさん…」
「アレはホットアイ!!オラシオンセイスが何で…!?」
「色々あってな。大丈夫、味方だ」
ジュラの言葉もあり、ホットアイが敵ではないと思うことに。
「ナツさん…!!」
ウェンディはそう叫び、ナツに抱きつきながら涙を流す。
「本当に、約束、守ってくれた…」
ナツはそんなウェンディを見てニカッと笑う。
そして離れたら、「ありがとう」とお礼を言った。
「皆の力があったから、だろ?」
「皆の…」
「ウェンディの力もな」
「私の…?」
「今度は元気よくハイタッチだ!」
ナツの笑顔を見て、ウェンディの顔にも笑顔が浮かぶ。
「はい!」
パンっと良い音を鳴らして、2人はハイタッチをかわした。
『(終わったんだな…)』
戦いが終わりホッとするルカ。
だが、この時は…
悲しい別れが刻々と迫っていることに、誰も気づかないでいた。
____
_____
______
「全員無事で何よりだね」
ハッピーがそう言い、皆が頷く。
「皆、本当によくやった」
「これにて作戦終了ですな***」
「キモっ!!(汗」
ほのぼのとした空気が流れている。
それはグレイの言葉によって砕かれた。
「…で、アレは誰なんだ?」
グレイの視線の先には離れた所にいるジェラールに向いていた。
その傍にはルカがいた。
ルーシィも彼のことが分からず「さぁ」と答える。
「ルカがあんなに懐いてるってことは、ブルーペガサスのホストか?」
「うーん……あんな人いたっけ?」
2人の疑問にエルザが答える。
「…“ジェラール”だ」
その答えに2人は目を見開いて驚く。
「何ー!?」
「あの人がルカの元彼!!?」
「だが、私達の知っているジェラールではない」
「記憶を失っているらしいの…」
ウェンディが「記憶を失っている」と言っても、警戒心を解かない。
過去にあんなことがあったから当然だと思うが。
「い、いや、そう言われてもよ…」
「大丈夫だよ!ジェラールは本当は良い人だから!」
「ルカと2人きりにさせて大丈夫なの?」
また彼女が泣かないかと心配するルーシィ。
エルザは彼女達の方を向き、目を細めた。
「……今は、2人でいさせてやろう。ルカもそれを望んでいる」
「………」
静かな眼差しで2人を見る。
エルザだってジェラールに話したいことはある筈だ。
それをしないのは、ルカのためを思って。
ジェラールという存在を失った後、「ジェラールが好きだ」と泣いたルカの顔を思い出し、今の彼女を見ると、本当に会いたかったんだなと思ってしまう。
記憶がなく不安でいるジェラールも、彼女といる時は柔らかい顔でいる。
2人の間には、切れない絆のようなものある気がした。
ジェラールが記憶を失くしても、彼はルカの存在を覚えていた。
エルザには2人を見守ることしか出来ない。
自分の気持ちを押し殺して。
「(ジェラール。またルカを泣かせてくれるなよ)」
.