『闇の中の人形(マリオネット)』
□タイムリミット
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オラシオンセイスが全員倒された。
その結果、ブレインが「六魔将軍」のメンバーとの生体リンク魔法によって封印していたもう1つの人格。
“マスター・ゼロ”が復活した。
破壊を好む彼は、ナツ、ルーシィ、ハッピー、グレイを倒す。
そしてニルヴァーナはケットシェルターの目の前まで来ていた――。
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「っ…」
顔を歪めたジェラールを横目で見て、
『傷、痛むの?』
そう尋ねれば、ジェラールは微笑みながら「大丈夫だ」と言った。
やせ我慢をする彼のことだ。
無理をしても大丈夫と言うだろう。
それを理解しているルカは、「無理しないでね」と念を押す。
ジェラールはルカを見ながら目を細める。
『何?』
「君は……優しいんだな」
『なっ…』
急に言われたことに、頬を赤く染める。
そして冷静を装いながら、
『私は、ジェラールが心配なだけなんだよ』
そう。
ただそれだけ。
2人の様子を見ていたエルザがポツリと呟いた。
「いつまで……」
『……?』
「ルカや私は…戦いの巷に身をおき続けるんだろうな…」
―ルカは幸せになるべきだ。
戦いに身をおき続けているかぎり、彼女は悲しい想いをするばかり。
そして泣くんだ。
その涙を拭ることは出来ても、
心に出来た傷までは癒すことは出来ない。
「(今のお前を見ていると…)」
この先の未来、またお前は泣くだろう。
そして自分も。
そんなことを思った。
予想に過ぎなければいいのだが、とも思いながら、目を閉じる。
『エルザ?』
急にどうしたのか尋ねようとした時、
「ジェラールー!!」
こちらに向かっているのはルカと同じドラゴンスレーヤーの少女、ウェンディ。
そしてハッピーと同じ羽が生えたしゃべる猫、シャルルがこちらに向かっている。
「ウェンディ!」
『良かった、無事だったんだね』
「はい!」
2人の無事を確認して、安堵する。
そしてウェンディはジェラールの方へと向き、笑顔で彼の名を呼ぶ。
「君は…」
困惑したジェラールの言葉を聞き、目を見開いた後に悲しそうな顔をする。
「(やっぱり、私のこと…)」
「ジェラールは記憶が混乱している」
「…!」
「私のこと、ルカのこと、君のことも覚えていないらしい」
『……』
そこでようやく理解した。
「(記憶……そっか…それで…)」
ウェンディの様子を見ていたルカは、彼女に同調した。
『(忘れられるって切ないよね)』
だけど、
もし楽園の塔のことを思い出したら、
ジェラールは今と違くなってしまうのか。
また敵対しなければいけなくなるのか。
そこが怖い。
ぎゅっと拳に力を込める。
『(それでも…)』
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