『闇の中の人形(マリオネット)』

□「“光”」
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ドォォォォォン!!!!


大きな揺れが起きたかと思えば、向こうの方で煙が上がっている。


あちらの方で何かあったに違いない。






「今の爆発は…」


「王の間の方だ」





ふとルカは、煙が上がっている方にナツがいると感じた。


それは直感のようで、確かな感覚。











「父上も人が悪い。僕の楽しみを奪ってしまうのだからね」











訊き慣れない声にバッと後ろを振り向いた。









「もう君たちが最後の獲物だ」




『オラシオンセイス…!』





オラシオンセイスの1人、ミッドナイトだ。



前に出ようとしたら、ジェラールがルカの前に腕を出して、動きを制した。






「下がっててくれ」



『だ、だけど…』





心配そうに眉をひそめるルカにジェラールは、




「せめて、これぐらいはさせてくれ」





その言葉に、彼女は押し黙った。








ミッドナイトの赤い瞳に、ジェラールの姿が映る。

ジェラールの手がミッドナイトの方に向け攻撃を放った。

しかし、その攻撃は方向を変えてミッドナイトの真後ろに落ちる。






「当たらなかった?…うっ…」





苦しそうな声を出したが、それでもルカたちを前に出そうとはしないジェラール。





「止せジェラール。その体では無理だ!」





エルザがそう言っても頑として引かない。





『(まったく、無茶ばっか…)』





ジェラールは元聖十大魔道の1人だった男。
とても強いのは分かっている。



だけど、ジェラールの攻撃はまったくミッドナイトに当たらない気がしてならなかった。







「おいで」





ミッドナイトは挑発的な言葉をジェラールにかけた。



ジェラールは更なる攻撃をミッドナイトにしたが、
ミッドナイトは傷を負うことなく、そこに立っていた。




ミッドナイトが次は僕の攻撃だと言わんばかりに攻撃を放つ。
それをまともに受けてしまい、ジェラールはその場に倒れた。










「どらしないねぇ。
これが“あの”ジェラールかい?

哀れな道化師」








あのジェラールが手も足も出ない光景に、ルカは「そんな…」と声を漏らす。








「記憶と一緒に魔法の使い方まで忘れちゃったのかな?ジェラール君」



「っう…」




手を地面につけ、必死に起き上ろうとしているジェラール。

あの目は、まだ戦う気だ。





「ふーん、まだ生きてんの。
僕はね、君のもっと怯えた顔が見たいんだ」









「(自らにかけた自律崩壊魔法陣で予想以上に魔力を消耗している)」






そう考えたエルザが動くよりも先に、ルカが動いていた。



水を纏った拳でミッドナイトに殴りかかったが、彼には当たっていない。

ミッドナイトが避けた様子はなく、ルカが外した訳でもなさそうだ。



余りのことに、ルカは目を見開いて動きを止めた。






『(何?コイツが避けた訳じゃない…私の攻撃が外されたってこと!?)』






「水竜(ウンディーネ)、君には個人的に興味があるんだ。

君はあのジェラールのお気に入りだしね」





「離れろルカ!!!」





エルザの声に反応し、言われるままにミッドナイトから距離を取った。

ルカが離れたことを確認すると同時にエルザがミッドナイトに剣を振るう。



しかし、その剣線もミッドナイトには当たらず、空振りしているような感覚に襲われた。





そしてミッドナイトの手がルカの方に向く。




攻撃がくると身構えたが、






『っ!!?』





突然自分の身につけていた服が自分自身を締め付けた。

呼吸すらもままならない状態で、余りの苦しさに顔を顰め、必死に抵抗を試みる。








「やっぱり良いね、水竜(ウンディーネ)のルカ。

君にはその顔がよく似合っているよ」






彼女の苦しそうな声を聞き、ジェラールがルカの名を叫んだ。





それを聞いたミッドナイトは、さぞ滑稽そうに顔を歪めた。














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