『闇の中の人形(マリオネット)』

□私の光、あなたの光
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『ジェラール!』




「ルカ、今回の仕事は早く終わったんだな」



『まぁ、ね』






笑い合う彼らは、どこからどう見ても穏やかな恋人同士だ。






だが彼らは自分達に、“普通”など訪れないことを知っていた。




普通の幸せは、もう求められないと。






それでも、彼と一緒にいて、幸せを感じている。






『あのさ、ジェラール…』



「何だ?」



『そろそろ放してくれないかな?…恥ずかしい』



「いいじゃないか。またしばらく会えなくなるのだろう?」




ジェラールはルカを独占するかのように膝に乗せ、その細い体に腕を回している。



しばらく会えなくなると言われ、ルカは照れながらもジェラールの腕の中で大人しくした。






「なぁルカ」



『ん?』



「お前は、俺の傍にいてくれるよな?」



『…急に何?』



「答えろ」





いつもより低い声で何かあったことは明白だ。



彼にも、不安になることがあるのだろうか。


そこに驚きつつも、ルカはジェラールに笑いかける。





『そんなの、決まってるじゃん。

私はジェラールを1人にしたりしないよ。

今だって、こうしてジェラールの元に来てるのが良い証拠でしょ?』





彼女の言葉を受け、ジェラールも口に笑みを浮かべ、ルカを更に自分の元に引き寄せた。




ジェラールはルカの耳元で、






「お前が俺から離れようとしたら……、俺がお前を殺す。

そのことを、よく覚えとくんだな」





その言葉を聞いたルカは、「そんな物騒な」と呟いた。





「大丈夫だろう?お前は俺から離れないのだから」



『はぁ…、そうですね』



「俺にお前を殺させないでくれよ、ルカ」















______



____



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『……ん』





目を開けると、ギルドの天井が見えた。




ルカはフェアリーテイルの医務室に住みついている。


その理由はただ1つ、家賃を払わずに済むからだ。






『(懐かしい夢を見たな。今まで見てなかったのに、何で急に…)』






1度目を閉じ、もう1度目を開く。



やはり夢。



こちらが現実だ。








「お!起きたか?」






ルカに跨って、彼女の顔を覗き込んでいるグレイ。


一瞬フリーズしたルカだが、すぐさまグレイを蹴飛ばした。


当たり前の反応だが。







「い、いきなり何しやがる!?ルーシィみてぇだったぞ!!」




『それはこっちのセリフ!!

何しに来たの?夜這い!?』




「違ェっつーの!もう夜じゃねェし!仕事を誘いに来たんだよ!!」




『…あ、そういう事ね』






ようやくグレイがなぜここに来たか理解したルカは布団から起き上がり、シャツのボタンを1つずつ外していく。




「ちょっ!待て待て待て!!!」





グレイの抗議の声に「今度はなに?」と彼に呆れた眼差しを向ける。



掌で目を覆って赤面しているグレイは、慌てたようにルカに抗議する。






「何でいきなり脱ごうとしてんだよ!!」




『だって仕事に行くんじゃ…』




「っ!俺は外で待ってるからな!!!」




荒々しく出て行くグレイの背を見て、ルカは呆気に取られた。






『……変なグレイ』










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