『闇の中の人形(マリオネット)』

□水竜の涙
2ページ/7ページ






気絶したエルザを地面に寝かせる。






「噂以上の傍若無人ぶりだな、身動きできねぇ仲間を痛めつけて満足か?」



ジェラールはナツの背を見て言った。




「エルザが…泣いてた…」



呟くようにナツは言う。

しかしその言葉には怒りがこもっていた。




「ルカだって泣てる…」




低い声にルカは黙り込んでしまう。





「…弱音吐いて…声を震わせて、泣いてた…そんなエルザは見たくねえ…

ルカも声を震わせて…悲しそうに泣いてんだ…
何でテメェがそんなルカを見てやらねェんだ…」




『………』






「エルザは強くて狂暴で…

ルカは頑固で皮肉めいてて、いいじゃねえか…」







ナツの体から熱気が溢れ出した。




まるで怒りを表しているように…







「確かにお前の方がルカの事を知ってるかもしれねぇ…

俺達より、ずっと傍にいるかもしれねぇ…

だがな……ルカを泣かせるってんなら許せねぇ!!!」







『(ナツ…)』













「悪い夢が覚めた時…

いつものエルザでいて欲しいから…

ここから出た時、いつものルカでいて欲しいから…

俺が戦うんだ!!!」







「面白い、見せてもらおうか。

ルカと同じ、ドラゴンの魔導士の力を!」




ジェラールはナツを挑発するように言う。





「うぉぉぉ!!」




ナツはジェラールに駆け寄り、攻撃を仕掛ける。





「火竜の翼撃!とぉ、鉤爪!」





ナツがジェラールに畳み掛ける。






『凄い……ジェラールを圧してる…』




今見てる時点ではそう感じた。





『(でも、ジェラールは…まだ“魔法”を使っていない)』






「火竜の咆哮っ!!!」




息を深く吸い込み、吐きだした。





―ゴオォォォォオ!



ナツの口から灼熱の炎は放出される。






しかし炎の中から、不敵な笑みを浮かべたジェラールの姿が…







「それが本気か?」




彼は無傷に近い状態だ。


ルカはふいに思った。




今のナツじゃジェラールに勝てない、と…








「ナツ・ドラグニル、イグニールの子…」



「!」



ジェラールはナツのことを知っているようだ。




「この手で消滅させちまう前に1度、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の破壊力を味わってみたかったんだが…

この程度なら恐れるに足らんな」




「何だとぉ!!」




ナツは挑発に乗って、ジェラールの元へと…






「よくも儀式の邪魔をしてくれたな……俺の天体魔法の塵にしてくれよう…


流星(ミーティア)!!」







.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ