『闇の中の人形(マリオネット)』
□水竜の涙
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《ルカSide》
何が正しくて、何が正しくないのか…
私には分からない。
ゼレフは私に呼びかけた。
あの声は悲しそうで、寂しそうで、苦しそうで…
助けてあげたいと思った。
そう思ったからこそ、ゼレフを捜した。
彼に会って、訊きたいことがあった。
ただ、それだけだった。
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「Rシステム作動の為の魔力が手に入った。
後は生け贄があれば“ゼレフ”が復活する」
ジェラールがエルザに近づく。
「うっ…あぁぁっ…」
『っ…』
エルザの苦しむ声を聞いて、更に心が揺れる。
『(体が、動かない…)』
だけど、このままじゃ…
エルザが…
『ジェラール…!
エルザを……殺さないでッ…!』
無意識に出た言葉。
これが自分の気持ちだ。
ジェラールが大切。
それも本当だ。
だけど、私にとってそれと同じくらい…
フェアリーテイルの皆も大切になっていた…
天秤にかけることなんて出来ない。
「………」
一瞬だけ迷ったようにジェラールの動きが止まったが、ジェラールは何も言わずにエルザを魔水晶の中へと…
『ジェラール…!!』
「偉大なるゼレフよ、今ここに、この女の肉体を捧げる」
『止めて――っ!!!』
叫んだ。
私が決断するのが遅すぎた。
「おっと!」
聞き覚えのある声に顔を上げた。
『ナツ!!』
ナツがエルザを魔水晶から引き摺り出す。
「エルザは妖精の尻尾の魔導士だ、渡さねーぞ」
「…ナツ…」
エルザも驚いたような顔をする。
ナツはエルザを床に寝かせた。
「たくっ……なーにしてんだよ?」
「ナツ……今すぐここを離れるんだ」
「ヤダね、お前が戦えねぇなら俺が代わりにやってやっからさ」
「止せ……相手が悪い…
お前はアイツを知らなさ過ぎる…」
「知らねえと倒せねえもんなのか?」
「…頼む……言うことを聞いてくれ…」
エルザは涙を流す。
そんなエルザを、ナツがよいしょと抱えた。
「エルザ、俺もお前を全然知らねぇ」
「……?」
「でも……勝てる!!」
―ガッ!!
『……!?』
ナツがエルザの腹を思いっきり殴り、気絶させた。
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