『闇の中の人形(マリオネット)』

□運命、どちらの味方?
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『水竜の翼撃!!』



「はぁ!!」





どちらとも一歩も引かずに攻撃をする。





しかし、






『っ…!?』





ぐらっとルカの体が傾いた。


何とか地面に手を突き、倒れこまずに済んだが、未だに視界が眩んでいる。






『(魔水晶に魔力を送り過ぎた…)』






それでもエルザに負けるわけにはいけない。



そんな想いが彼女の体を動かしていた。






「ルカ……お前、魔力がほとんどないんじゃないのか…?」





エルザにそう問われ、すぐさま否定した。





『そ、そんな訳…!』




しかし言葉とは裏腹に体は正直だ。


体に力が入り辛い。


視界も眩んで、頭が痛くなる。












「ルカ」





意識が朦朧とする中でジェラールの声がルカの頭の中に響いた。



そして今にも倒れそうなルカの体に腕を回す。





「もういい。お前は休め」





彼の声で瞼を閉じる。


閉じたと同時に、意識が闇へと落ちていく感覚。




意識が消える寸前に、必死に自分の名を呼ぶ声が聞こえた。






「ルカ…!!」





それはエルザの声。





『(エルザ……私、やっぱり…)』





自分の気持ちを伝える前に、ルカは意識を手放した。







ジェラールは意識を失ったルカを横抱きにし、自分が座っていた椅子に座らせる。



顔に掛かった前髪を優しく掬い、耳に掛けた。



彼のそんな仕草を見て、エルザが呟く。






「…随分と、ルカに御執心なんだな」






その目はどこか悲しそうで、切ない目だった。






「…まあな。ルカは4年前から俺の傍にいてくれた。

ずっと俺の傍にいると言った。

ルカは俺にはなくてはならない存在だ。

―――お前達に渡す気などない」





背を向けていて顔は窺えないが、ジェラールの言葉は本当だと思った。


ルカの頬に触れ、彼は目を細めた。


瞼を固く閉じた彼女は、まるで美しい人形のよう。


そして、そんな彼女に触れるジェラールの手はとても優しく、壊れものを触れているみたいだった。





だが、彼女はジェラールという存在に縛られている。


エルザはそうも思った。






「…私は、ルカをお前から解放する。

例えルカが、それを望んでいなくてもだ」





エルザも本気だった。



ジェラールはエルザの方に目を向ける。





「やれるものならな」












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