『闇の中の人形(マリオネット)』

□ジェラール
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ルカはジェラールの椅子の横側に座っている。


そしてジェラールがチェス盤上にある駒を動かしているのを眺めていた。



彼女の心の中はまだ靄がかかったように晴れていない。


それどころか、より深くなっていった。





『(私は…どうすればいいの…)』














暗殺専門ギルド・髑髏会。


三羽鴉(トリニティレイヴン)とナツ達は戦っている。



ヴィダルダス・タカ

梟(ふくろう)

斑鳩(いかるが)



この3人を駒に使って、ゲームをしている。

名は「楽園ゲーム」。



ゼレフを復活させられればジェラール達の勝ち、それを阻止出来ればナツ達の勝ち。






しかし、評議会が衛星魔法陣(サテライトスクエア)、エーテリオンをここに撃とうとしている。



撃たれたら、ここにいる者たちは全員消滅する。




それがゲームの制限時間だとジェラールは言った。






『(…ここで、ジェラールを止めれば…)』






自分がジェラールを止めれば済む話だ。

だがそれはジェラールに対しての裏切り行為になる。


それ以前に、今の自分の行動はナツ達にとっては裏切りも同然。



どちらかを捨てなければいけない。





結局はその選択肢が待っていた。





両方を掴もうとすれば、どちらも崩れる。


片方しか選べない。


1つは大切な人、1つは仲間。


選べるわけないじゃないか。







『!この魔力…(ユニゾンレイド)』



「小娘といえど、さすがエルザの仲間と言ったところか…」



『うん。…でも、もう動けないみたい』





これでしばらくは傷つかずに済む。

そこにルカはとても安堵していた。





「随分と嬉しそうだな、ルカ」




その声でルカはジェラールに視線を向けた。


彼もまたルカを見て、その口元に不敵な笑みを浮かべている。



“見透かされている”。



直感的に感じ、バッと視線を逸らしてしまう。




『(や、ヤバ…挙動不審過ぎる…)』




誤魔化しの言葉を探すが、
どう言えばこの気まずい空気を乗り切れるのか分からなかった。



再び黙り込んでしまった彼女の背を見て、
ジェラールは静かにルカの後ろ髪に触れた。




『え、な、何っ…』




その手はすっと彼女の首筋へと移動し、




「成る程、こんな所にあったのか」


『っ!』




彼が触れている部分にあるものにすぐさま気づいたルカは体を強張らせた。




ジェラールが触れているのは、
ルカの項にあるフェアリーテイルの青い紋章。




『――っ!?』



ジェラールに後ろ髪を引っ張られて体が後ろに傾き、
ジェラールの膝の上へと落下してしまう。



顔を上げれば、目の前にジェラールの顔。



彼の瞳に捉われて、目を逸らせない。






「最近来なくなったと思ったらそういう事か。

フェアリーテイルの仲間になったお前に俺はいらない。

…俺は用済みという事か?ルカ」





『っだ、誰もそんな事…!』





反論を言おうとしたが、その先の言葉は喉に閊えて出てこない。




彼の瞳に滲み出ていたのは、確かな悲しみと怒り。






『ジェラール…?』





今まで、こんな彼を見たことがない。



だからこそ不安になって彼の名前を呼んだ。









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