『闇の中の人形(マリオネット)』

□水の滅竜魔導士
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ギルドの外に出た2人は、未だに睨み合ったままだ。



そんな2人の喧嘩を見物しているギルドのメンバーの表情にも緊張感というものが滲み出ていた。







『…そちらからどうぞ』





ルカからの挑発的な言葉に、単純思考のナツは簡単に乗った。






「じゃあ援助無く!!火竜の…咆哮ーッ!!」





口から灼熱のブレスが放たれ、その炎が勢いよくルカに向かっていく。


それを見ても1歩も動こうとしないルカにルーシィは思わず「危ない!」と叫ぶ。





その叫びも虚しく、ルカは炎に呑み込まれた。






「よっしゃー!!俺の勝ちだー!!」






もう勝ちだと確信したナツが大声で叫んだ。



心配になったルーシィはルカに駆け寄ろうとした時、



































『水竜の鉤爪ッ!』




足に水を纏ったルカが、ナツの炎を消し飛ばした。





「なっ、俺の炎が…!!」





勝ちを確信していたナツが今起きている現状に驚きを隠せずにいる。





「あの子、ナツと同じ魔法…!」





ナツと同じ魔法を使うのは、ファントムのガジルを含めて2人目になる。







「…ルカ・フィーリアム…

【水竜(ウンディーネ)】という異名も持つ水の滅竜魔導士。

ボブから聞いてた通り、相当腕が立つみたいじゃのぅ…」





いつの間にか隣りにいたマカロフが、まじまじと2人の喧嘩を見ていた。



そしてマカロフの呟いた【水竜(ウンディーネ)】という名を思い出す。





「水竜(ウンディーネ)…その魔導士の名前は聞いたことがある」


「俺も聞いたことがあるな」


「何か、街半壊させて評議員に目をつけられてるとか何とか…」


「そりゃあ、何とも」




ルーシィの言った言葉にグレイは苦笑いを浮かべる。



フェアリーテイル以外のギルドにもそんなことをする魔導士がいたのかと呆れて何も言えない。




ドラゴンスレーヤーは何かを破壊せずに仕事が出来ないのか。

切実に思った。









水と炎ではナツに不利だ。




ナツの動きが止まった隙に、ルカは素手でナツを殴り飛ばした。





「かはっ…」





背中を壁に打ちつけたナツは、力なくずるずると座り込んでしまった。




どうやらルカは魔法だけでなく、体術の腕も立つようだ。






「あのナツが…!!」


「やられやがった!!」


「いつものことかもしれねェけど!!」






ファントムの時にガジルに勝ったナツだからこそ、負けるなんて想像もつかなかったルーシィは唖然としてする。






「ナツー!!大丈夫!?」




ハッピーはすぐさま壁にもたれかかっているナツに駆け寄った。




ふぅ、と軽く息をついたルカ。


その表情から余裕が窺えた。




『…私の勝ちだね火竜(サラマンダー)。

あんたがダメにした食事代はちゃんと利子つけて払ってね』





そう言い残したルカは、行く先を告げずにどこかに歩きだした。






去る彼女の背を見て、ナツは小さく呟く。





「あいつ、強ェ…」



「そりゃあ、そうじゃろうな」




マカロフがナツの隣りに立ち、ナツと同じようにルカの背を見据える。





「じっちゃん!…なぁ、何であいつはフェアリーテイルに来たんだ?

あいつブルーペガサスなんだろ?」





ナツの問いかけにマカロフは悩むような素振りを見せると、





「あ奴はお前と同じ、“ドラゴン”に育てられた子供だそうじゃ」



「ドラゴンに…!?」





“ドラゴン”という単語にナツは過敏に反応する。




ナツもドラゴンに育てられた子供だった。

だが、火のドラゴン“イグニール”は777年7月7日に何も言わずに姿を消したのだ。


ナツは今もそのドラゴンを捜している。




ルカもそうなのだろうかと、訊きたいが、すでに彼女の姿はどこにもなかった。







「4年前に餓死寸前の所をボブに拾われたらしいんじゃが…

それ以外は何も話さないそうじゃ。

ギルドの者には心を開くようになったんじゃが、それ以外の者には全然とのこと…

それを見かねたボブが、フェアリーテイルにルカを預けたという訳じゃ」






つまりは、ギルド内だけでなく他の人とも関わって欲しいということだ。



娘に成長して欲しいという親心のようなもんだろうか。



確かに、ブルーペガサスにいたままでは無理な話だったのかもしれないとルーシィは思う。







「(あの悲しげな目は……何か抱え込んでる目だった。

放っておいてってルカは言ってたけど、放っておける訳ないよ)」






放っておけない。


ただただ、そう思った。





彼女は1人でいる時、なぜか分からないけど淋しそうに見えた。






放っておけというのが彼女の意思かもしれないが、
そんな彼女を放っておけるほどフェアリーテイルの皆は非情ではない。







「(絶対に、心を開かせてみせるんだから!!)」











.→To be continued...
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