『闇の中の人形(マリオネット)』
□Prolog
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《ルーシィSide》
クエストの帰り…
どこからか“歌”が聞こえた。
綺麗で儚くて、悲しくなるような歌声。
その歌声を辿って森の中に入った。
森を抜けて、目の前には綺麗な緑の草原が広がっている。
草原の中央ぐらいに少女が立っていた。
この歌はあの子が歌っているみたい。
この青空のような淡い水色の綺麗で長い髪を風に靡かせて、その子の横顔はこの世の人とは思えないほど綺麗だった。
同じ女の身で思わず見惚れてしまう。
―ガサッ!
足元の草を踏んだ瞬間に、音を立ててしまった。
「(や、やばッ!)」
心の中で叫んだ。
その音に気付いたのか、歌が止まり、その少女がこちらを振り向いた。
吸い込まれそうなほど綺麗な蒼い瞳に、透き通ってしまいそうな白い肌。
本当にこの世の人間なのかと疑いたくなるほど美しい容姿をした女の子。
その蒼い瞳で不思議そうにこちらを見ている。
「あ、あの……」
取り合えず何か話さなければと思って口を開こうとした時…
「おーい、ルーシィー!」
「ルーシィー!」
ナツとハッピーの声が聞こえてきた。
その声がどんどん近くなり、その姿が見えた。
そしてこちらに気づいたのか急いで駆け寄ってきた。
「急にどこ行ったかと思ったよ」
背中に羽の生えた青い猫が目の前で止まった。
ナツとハッピーはよほど捜したのだろう。
「たくよ〜……エルザが探してたぜ?」
「それは怖いわね…」
―あ、あの子は…
そう思い振り返ると…
「いない……」
目を放した隙で、どこかに行ってしまったらしい。
何て素早いこと。
「どうしたの?」
あたしが急に振り返ったことにハッピーが訊ねてきた。
「さ、さっきね…すっごく綺麗な女の子がいたの」
「女ぁ?いねぇじゃねーか」
ナツが「ルーシィの嘘つき」みたいな風に言うから、反論した。
「さっきまでホントにいたんだってば!!」
この時のあたしは…
この女の子が、あたし達に関わることになるなんて…
思ってもみなかった…
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