短編集

□甘い温もり
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『ほら歩け!!』

僕は裸足のままコンクリートの上をあるいていた。
どこかのビルの地下駐車場のようだった。
粉雪がぱらつきそうな寒さのなか見渡す限りに広がる薄暗い灰色が恐怖心を煽る。

"僕はこの後どうなるのだろう…"
そればかりが脳裏に焼きついて離れなかった。

"なぜこうなったのだろう…"
と考えた。
今日は土曜日で学校が休みだった。
だから僕が目覚めたのは昼すぎだった。身体が痛かったのを覚えている。
起きると同時に、玄関の方で怒鳴り声が聞こえて部屋から出て玄関の方に歩いた。
そこには、スーツを着た怖い顔の人が3人にピッタリと地面に額をつけ土下座する父の姿があった。
そして何かをひたすら謝っているように見えた。また怖い顔の1人が父の耳元で何か話しているようで、父がいきなり顔を上げた。その青ざめた顔は今でも鮮明に覚えている。
怖い顔の人が僕に気がつき父が振り返り少し微笑みながら僕を呼んだ。
僕は嫌な予感がしたが父の命令には逆らえなかった。
父に近づくと…
あぁ…
僕怖い顔の人に殴られて記憶が飛んで…気がついたら車から下ろされてここを歩いていたんだ。

歩いて10分ぐらいだろうか…
ビルの中に入る扉みたいなのが見えてきた。
その頃には、僕の足はしもやけで真っ赤になりもう感覚もほとんどなかった。僕は怖い顔の3人に続いてビルの中に入った。
エレベーターで上に上がりその階の1番奥の部屋に入った。
そこにはイスに座った人が2人とガードマンみたいな人がたくさんいた。
イスに座ってる人は1人はいかにもヤクザって感じのオーラを放っている50代ぐらいの男で、もう1人は若くて男の僕からでもかっこいいと思うくらいの容姿、そしクールな雰囲気をだしていた。
僕はその2人の前に押し出された。

『組長。こいつが前田の息子です。身体を売るなり、内臓を売るなり自由にしていいと前田から掻っ払ってきました。』
怖い顔の人がそういうのを聞いて僕は青ざめた。でもすぐに分かった。
"父は僕を売ったんだ。"
理由は分からないが直感でそう感じた。どちらにせよ僕に自由はないだろう。あの家もここも…

僕は男同士できることは知っていたが、やり方は知らない。
それより内臓を売るなんて本当にあるなんて知らなかった。テレビや小説の中のことだと思っていた。

そんなことを考えているとイスに座っていた年上の人が話し出した。
この人がたぶん組長なのだろ。
そして僕の顎に手をあて下から上へ吟味し始めた。
『こいつは身体を売らせた方が金になりそうだな。どう思う玲二。』
年上の人は隣りに座る若い男の人に
聞いた。
すると男の人は少し黙り話し出した。
『親父。この間なんでも1つやるといったよな。……。こいつを俺にくれ。』
男の人の以外な発言に僕は固まった。
そんな僕をよそに組長らしき人は
『あぁ。そんなこともあったな。べつにいいだろう。殴ってストレス解消ぐらいはできるだろう。』と言った。
やっぱり僕は…
そう思うと続いているはずの未来さえ見えなくなっていった。
"僕に生きる意味なんてあるのだろうか…."
その答えが出ないまま僕は若い男の人に担がれた。
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