擬人化
□隠したい。
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『なんで俺の前にいつも立つんだよ!お前の方が高いんだから俺が隠れるだろう!』
俺がこんなにも怒っているのに、
慎は何も言わずただ笑顔…むかつく。
慎は俺よりも15cmも背が高い。
太っている訳ではないが俺よりも体付きが男らしいせいで俺の前に立つと俺はスポリと姿が見えなくなる。
慎とは幼なじみで小さい時からずっと一緒だが、小さい時は俺の前に立ち俺を隠すようなことはしなかった。
なのに…ここ2週間ことあるごとに俺の前に立つ。
『なぁ…。慎なんかあったの?お前最近おかしい…。』
『何かって?何も無いよー。ただ律が好きなだけだよー。』
平然とそんな恥ずかしいことを口にする慎にイライラする気持ちとドキドキする気持ちが交差する。
『じゃあ…なんで俺が嫌がることわざわざするんだよ…。』
『…。…まさか気づいて無いの…?』
『何を?』
『最近律の周りの奴律に色目使ってるじゃん…。』
『はぁ?色目?俺男だし。…。
もしかしてだから、俺の前に立って俺を隠してるのか?』
『律…俺に抱かれてから前より色気ましたからね。うん。そうだよ、律をそんな目で見られたく無いし。』
『だ、抱かれ…』
慎の言葉に顔が赤くなるのが自分でも分かる。それと同時に俺を守ろうとしてくれていた慎に怒鳴ったことに対する罪悪感に覆われた。しかし、一度言い出したことをどのように後戻りしたらいいか分からなかった。
『じ、自分の身ぐらい自分で守れる。』
自分でも俺は可愛げが無いなと思う。なんでこんなことしか言えないのだろうか。自分に嫌気が差す。
『んー、もぅ可愛いー。なんでそんな可愛いかな…好きだよ。』
慎はこんな俺のどこが可愛いのだろうと思う。でも好きな人に言われると悪い気はしない。
俺は慎の胸の中に顔を沈めて、腕を回した。
『…ばか慎。』
『馬鹿でいいよ。』
慎は俺の腰に手を伸ばし強く抱きしめた。