短編集
□千鶴くんの恋。
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恋について深く考えたことなんてなかった。
年頃になって周りが誰々が好きだの、誰と付き合っているのかなどあまり興味がなかった。
でも僕はそれで良かった。
深い理由はないけど、自分自身それについて悩むことはなかった。
「俺さ…千鶴のこと好きなんだよ、ね…。友情の好きとかじゃなくて、恋愛の方の好きなんだ。
別に千鶴とどうこうなりたいつもりはないよ。ただ伝えたかった。
ごめん、引くよな…。
幼馴染の男に告白されても…」
夕暮れの帰り道、不意に幼馴染の洸に告白された。
でも、嫌じゃなかった。
真剣な目で僕をまっすぐ見ていてくれることが嬉しかった。
「いいよ。」
「ふぇ?」
「だから、付き合ってもいいよ。」
僕は気がつくとそう答えていた。
でも、その答えにあまりにも洸が幸せそうに笑うから僕も幸せな気持ちになった。
これが恋なのかもしれないと、同じ歩幅でとなりを歩く洸を見て僕は思った。