短編集

□初恋の色。
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大きくなるに連れて人は初恋の思い出、熱を忘れるという。初めて自分よりも他人を好きになる。その瞬間全て始まる初恋。それはほとんど叶わない。甘くてほろ苦いのにいつの間にか忘れてしまう。でも僕は初恋を忘れることはないだろう。僕がこの世で1番大切な人は絶対に忘れさせないから。

『やっぱりここにいた。』

後ろから聞こえる耳に馴染む少し低い声。心を直接抱きしめられているような暖かさに包まれる。振り向く俺の側まで歩いて来ていた直樹に腕を伸ばす。
小さい頃身体検査の度に見せあいっこして"また同じだー。"と言っていた頃とは違い今では10センチ以上高い直樹の腰に腕をからませ、下から見上げる形になる。

『なぁに?誘ってる?』
『何言って…(照』

頬を赤く染める僕を見て直樹はまた軽く笑う。そして腰を屈めて優しく僕にキスを落とす。

『えっ…ちょっ…ここ外なのに…』

照れる俺を他所に余裕綽々の直樹がいつもよりかっこよく思える。駄目だな…。俺べた惚れだよ。

『ほら、学校行くぞ。』

差し伸べらる手にそっと未来を感じる。この優しい手は永遠に俺を逃がさないだろぅ。それが心地よい。小さい頃感じた初恋の熱…。それは音も断てずに日に日に俺の心を侵食していく。これからもそれは変わらないだろう。

『ほら、早く。』

俺はあれこれ考えるよりもこの力強い腕について行けばいいのだろ。
直樹の腕に腕を絡ませる。

『このまま学校行けば入学早々噂たつな。』
笑いながら話す俺に"それもいいな"と優しい笑顔で返してくれる。淡い楸色の桜に誓う。俺は永遠にこの人に恋をし続ける。
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