短編集

□蜂蜜のハチミツ漬け
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『やぁだぁちゅうして?
おねがい…だから…
ぼくをすきっていって…』


''はい!そこでうる目!"
言われるまままるでチワワのように目をうるうるさせる。
"きゃあーかわいいー!"
まるで目の前に芸能人でもいるかのように騒ぐ。
その女子の黄色声は教室中を飛び交う。お昼休みのかるく木漏れ日が指す二階の1番端の教室…
今日もいつも通りあれが行われていた。昼休み恒例"BLセリフ大会"
女子の勝手な思いつきでいつの間に始まっていた。
かわいい系のやつは受け役を
男の中でも男ぽいやつは攻め役をさせられる。よく基準のわからない遊び。

その中でもいま騒がれているやつが女子のお気に入り。
そいつは俺の幼なじみだったりする。
まぁ、そいつは可愛い。
俺が小さい時から可愛がって可愛がってそうさせたから可愛いくて当たり前。俺が俺の好みを作ったんだから…

『前田くんー!きてー!』
前の方にいた女子数人に呼ばれて俺はその大会に混ざる。
俺も毎日のように参加させられる。
拒否権がないのを知っているから
抵抗はしない。
それに俺がセリフをいうと真っ赤に顔を染めて俺を見る蒼の姿を見れる。
その照れたかわいい姿はヤバイ。
『なんてセリフ言えばいい?』
セリフは女子がこの人はこれとか勝手なイメージで決めていた。
『うーん…とこれ聞きたい!!』とノートの右端を指差す。
女子と言うのは本当妄想好きだ。
『これ相手役いるな…あ!葵おまえやれよ。』
俺のそのセリフに女子たちが騒ぎだす
葵は少し顔を赤らめコクッと頷く…
『それじゃあ…ヨーイ…スタート…』
俺は軽く空気を吸い込み役に入り込んだ。その瞬間周りの空気が静まるのを感じる。
『おい!逃げんな。』
俺は壁に蒼を追い込み、逃げられないように顔の横に手をつく。
『俺から逃げられると思ってるのか?
お前は俺のものだ。キスするから…
口あけろ。』乱暴な口調で命令する。
そして顎に手をあててキスをするフリをする。ちゅっと自分で音をつくる。

ちゅ…

『愛してるよ…葵…』

セリフが終わってもしばらくの間辺りは静まり返っていた。
しばらくすると女子たちの悲鳴に近い声が教室中に溢れた。

"き、きゃー!完璧!てか…エロい。
エロすぎるー!やっぱり学園一の男前のセリフは違うーかっこいいー"

周りからとぶ黄色い声…
それよりも俺の目の前の真っ赤に顔を染める葵。
うるっとした目で見上げてくる。
それがなんとも言えないぐらいエロい。
こいつ俺が"口あけろ"ってセリフで言ったのにガチで開けてたし…
ちゃんと注意しないとな。
こんなに無防備だと守るこっちが大変なんだよ…
しっかりと男はオオカミ教えこまないと…

そう言ってこいつを見つめる俺の目は明らかな劣情的意味合いを持っていた。1番危険なのは俺か…
そう思うと笑いが込み上げてきた。






俺は、蒼がその後発した『狡い…』さえ褒め言葉に感じていた。
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