短編集
□初恋の実らせ方
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お、重い…
俺のベッド…
そして俺の上によく見慣れた顔。
本当毎朝、毎朝…
重い重圧に気づき起きるこれが俺の習
慣。それでも…朝まで安眠できるのはこいつが人よりも小さいからだろう。
『おい!起きろ千聖…』
ピクリともしない。
こいつはどんだけ無防備なんだ?
いくら男同士でも上半身裸で寝るベッドに入りしかも上で寝るって…
普通考えられないだろ…
俺は溜息を漏らした。
"俺以外の男なら速攻襲われてるぞ。"
小声でつぶやきほっぺを軽くつねる…
こいつは自分の可愛さを理解してない
千聖を守り続けてはや12年…
4歳の時に隣に引っ越してきた千聖に一目惚れした俺はそれからずっとこいつを女ぽいとイジメるやつ、こいつを恋愛対象と見るやつは抹殺してきた。
しかし、こいつがこんなに無防備だから…
いくら消してもきりがない。
今日は創立記念日で学校は休み。
だからと言ってこのまま寝かしておく訳にも行かない。
時計はちょうど9時を指していた。
俺は千聖の体を揺すって起こす。
『千聖。起きろ…』
するとまだ眠いのかうとうとしながら目をこすり起きようとする千聖。
本当可愛いよな…
『うぅん…ゆうちゃん?おはよ…』
口をむにゅむにゅさせながら言うのは寝起きのこいつの癖。
小さい頃から変わらない。
『いま…なんじ…?』
『9時ジャスト。』
それを聞くなりまた掛け布団に顔を埋め込み寝ようとする…
『おい…寝るなら自分の部屋で寝ろ。』
本当俺の理性の限界を知って欲しいよ。
寝てる時ならまだしも…
起きてる時に好きなやつがぴったりくっついてくるのは…やばい。
千聖の熱が俺に伝わるだけでまるで初恋にどきまぎする小学生みたいになる。
いや…それ以上か…
『ここがいい…ゆうちゃん温かいもん…落ち着く…』
ほんとにやばい。
『千聖。他の男にもこんなことしてるのか…ベッドの中に入ったり
くっついて寝たり…襲われても知らない…千聖?』
千聖の目から一粒の雫が頬をつたう
"うぅうぅ…"
ぽたぽたと涙がベッドに落ちる。
持っていた枕を投げてくる。
"痛っ…"
『ゆうちゃんのばか!ゆうちゃんなんか大キライ…うぅグスン…こんなに僕頑張ってゆうちゃんにアピールしてるのに…他の人になんかしないよ…うっうぅ…』
そういうとそっぽを向いて泣き出す。
頭が真っ白になる…
えっ…?
千聖は俺が好きなのか?
まじかよ。
俺は心の底からの笑みが溢れていることに気がついた。
『千聖…こっち向いて…?』
俺は優しく呼びかける。
『ゆうちゃんなんか大キライ…』
そんなの可愛いだけなのにこいつは狡い。
『千聖…好きだよ。だからこっち向いて…お願い。』
自分でいいながらなんて理由だと笑いそうになった。
でも…そんな俺に千聖は意図も簡単に騙される。
真っ赤な顔を掛け布団から半分だす。
こいつは焦らす天才だ。
俺は覆いかぶさるように千聖の上にいく。
そして耳もとで"愛してる"
と囁く。
すると驚いたらしく目を見開き俺をみる。
そして…
小さい声で"僕もすき。"
という囁きが俺の脳内を揺らす。
俺はゆっくりと千聖を抱きしめた。
俺は、ずっと欲しかったものが自分の腕の中にある幸福に浸り続けた。